少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

263  広州にて

本日の少数派日記は芸能人のブログのようにテーマのない旅日記です。お忙しい方はスルーしてください。
20代の後半に2年ほど完全フリーランスで文筆一本で生活した時期がありますが、どうしても締め切り間際にならないと原稿が書けない・・・という習慣が現在も続いています。原稿の締め切りを気にしながら飲んだり寝たりするのは決して気分の高揚するものではありませんが、どうしても尻に火がつかないと始動できないタチで、思い起こせば小学校の夏休みの宿題はすべて8月31日にまとめてやっていたのを思い出しました。
そんなわけで、いつも海外に行く前日はパニくり状態です。何日も準備期間があるのに、毎回これです。絶対に必要なパスポートとお金、携帯電話だけはポケットにねじ込めば済みます。あとは一日分の着替えと2〜3冊の本と仕事の資料とパソコン。実は僕の荷物はこれだけで、パソコン用のショルダーバックでこと足ります。
ただ、毎回、大量の荷物になるのは、飛行機の持ち込み限度いっぱいの古着を持ち込むからです。今もまだ、チベット地方の寺院で生活する孤児たちへの物資提供のボランティアを細々と続けています。古着を中心に文房具やオモチャなど、前回は、昔マクドの景品だったキティちゃんのぬいぐるみが大評判だったそうで、まだどこかに転がっていないかと夜中に家中を探しまわったり、混合されたストックの中から夏物だけを取り出したりと、一日前にやっておけばいいものを、今になってというありさまです。まあ、これは仕事ではないのでまだいいのですが、仕事がらみも前日(当日)決済です。
パソコンのTO DOリストを数日前から紙に書き出して細々と実行してもどうしてもギリギリにならないとやれない性格なのです。例えば請求の振り込みも金曜日の午後1時55分にならないと銀行へ行かないとか。各種チケットの申し込みも締め切りの20分を切らないと連絡しないとか。つまり、僕の人生そのものが滑り込みセーフ(ほとんどアウトだったりして)のゲーム展開なのです。
19日は午前8時30分羽田発の中国国際航空便で羽田ー北京、乗り継ぎ北京ー広州の10時間の旅です。ドアtoドアなら15時間の旅になります。朝5時20分には家を出なくてはならないのに、午前3時の時点でやり残したことが山積。ビジネスレター2通に、送付しなければならない資料3通。僕は人さまが驚くほどの悪筆ですが、目上の方に送るビジネスレターは手書き(むしろ読みにくいのですが)にしています。コンビニで資料のコピーが完了したのが、午前4時過ぎ、もう夜が白んできました。
テレビをつけ刻一刻と流れる画面の時刻を気にしつつ、キティちゃんの捜索をあきらめ(ごめんチベットの子供たち)、汚れものを洗濯機にぶち込み、冷蔵庫の中の食べ残したナマ物を捨て、それを急いでゴミ集積場に捨てに行く。寝不足でダッシュが出来ないので競歩で。新宿駅6時発の羽田行き高速バスに乗るには、笹塚発5時20分の汽車がベストだが、次の43分発でもギリ間に合う。家からタクシーで行けば、この時間なら10分もかからない距離がけど料金が2000円くらいかかるので、そんなブルジョアはできない。あくまで京王線120円で新宿まで行ってみせる。問題はこの荷物と何か所かある駅の階段だ。渋谷発6時13分のバスなら、近所のバス亭から乗り、降りた目の前が羽田行きのバス亭なので、有難いのだが、このバスの始発が6時34分。決定的に間に合わない。
テレビの時刻はすでに4時50分。僕はなんとか無理やり終了させたビジネスワークを確認して、風呂場に駆け込む。シャワーを浴び、ヒゲを剃り、洗濯済みのパンツをはく。我が家のクーラーは地球の温暖化を阻止するため、この8年間は使用していない。シャワーを浴びたばかりで全身拭いたというのに、まるでシャワーを浴びたばかりのような人と思われるような汗が再び僕の全身をずぶ濡れにさせる。
テレビの時刻は5時08分。普段ならゆっくり歩いても6分で行ける駅までの道。荷物というハンデをしょって10分で行けるか?切派詰まったアメフトのゲームのように、僕は安全策をとらず、20分に乗るというギャンブルに出た。
しかし、チベットの子供たちの古着は思いのほか重く、世界の壁は幾重にも重なり、日本代表の攻撃を思うようにはさせてくれなかった。僕は笹塚駅のエレベータの前で20分発の汽車が出発する警笛を聞いた。ホームに着くと、汽車の姿すらなく、すでに汗びたしになった僕のシャツだけが惜しくも敗れた日本代表の健闘を讃えてくれた。
午前5時21分。笹塚駅ホームにはピーカンの太陽の陽が燦々降り注がれ、この次にここに来る時には、取り壊し作業が始められ、もう見ることのない駅ビルを眺め、僕がふと思ったのは「トヨジって毎朝、こんな時間に起きとるんか〜」ということだった。(つづく)