少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

276  広州にて12(詐欺られる)

重要な情報です。お知り合いにも伝えてください。
7月31日朝6時50分、僕は35階の自室マンションから荷物を持って階下に降りる。昨日、件のアヤちゃんに迎えのタクシーを予約してもらったが、その後アヤちゃんと確認の連絡が取れず、約束時間を5分も過ぎるとやや不安になる。7時15分の空港バスに乗らないと・・・。
少し遅れたけどタクシーは来て、バスには間に合った。広州白雲国際空港に到着し中国国際航空AIR CHAINA)にてチェックイン。搭乗までの約2時間、僕にはやることが2つほどあった。
ひとつは朝食、もうひとつは今朝剥がれた足の親指の爪の応急処置。優先順位は足の治療だ。僕はわざわざ人の少ない階下に降り、さらに人目のつかない待ち合いベンチを探し、腰を下ろした。この人目につかない場所というのが第一の落とし穴のポイントになります。
僕は一刻も早く治療をしようと、消毒液、抗菌クリーム、包帯など治療セットを用意すると、やたら笑顔の男が僕の席から少し離れたところに腰掛け、こちらをちらちらと見る。僕は治療する姿をあまり人に見られたくないので、早く去らないかなと思いながら、男を見ると、男はバッグの中から今話題の「iPhone」を取り出し「1万元(約1万5000円)で買わないか」と言う。なんだ盗品の密売屋か「いらん!」とかなり強い口調で言う。
しかし男は全くひるむことなく「いくらなら買う」と、僕との距離をじわじわと縮めてくる。「不要、不要」と僕は声を荒げるのだが、男は「いくらなら、いくらなら」と相当しつこい。僕は男が絶対に売らないだろう金額「100元(1500円)」と突っぱねた。ところが、僕にこの具体的金額を言わせることが男の突破口だったのだ。
男は「お〜」と言いながら気がつくと、僕の横に座っていた。そして僕に、その「iPhone」を手渡すのだ。アップル社の「iPhone」は以前、ほんの少しだけ興味があったけど、続々と新製品が登場するので、今はまったく興味がない。だから要らないのだ。
ただ、手に取ってみると、なかなかいい。面白そうだ。ビジネスアイテムとして役に立ちそうだ。「100元ならいいけど、それ以上ならいらない」と、あきらめて絶対に売らない金額を再び男に告げ、た。しかし男はさらにしつこくなる。
男は一旦、僕から離れ少し距離を置く。一瞬、僕は男があきらめて立ち去ったのかと思いホッとしたが、今度男は「500でどうか」と言ってくる。実物を見てしまったので、僕の思考回路は「ハナから要らない→500元って日本円でいくらか?」という思考に変わる。つまり男の術中にすでにはまりかけているのだ。
「だから要らん。早よ行け」僕は怒った口調で男を睨むも、男は終始笑顔で「400,400」と言ってくる。「400・・・6000円かあ・・・」僕の脳裏に具体的な日本円の数字が浮かぶ。
「もう一度見せてみろ」と僕は男を指で呼んだ。
男はスッと僕の横に来て「iPhone」を手渡した。ほんの少し触ると「公安が来た」と男は僕の手からそれを取り戻し、素早くバッグに隠した。
そして「早く400を渡せ」と耳元で言う。
「バカ言え、公安がいるのにそんなことできるか、早くあっちに行け」
ここで僕は男のひと言でふっと我に帰る。「わかってて盗品を買う奴がいるから窃盗が減らない。結局は買う方にも問題がある」そんな当たり前のことだが、実際現場に遭遇すると、改めてそう思う、なのに、僕はこのあと、完全に男の術中にはまってしまった。(つづく)