少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

460 最後の一葉

「最後の一葉」という言葉が頭に浮かんだ。11月も終わりに近づいた29日月曜日、快晴の東京の空の下。ふと窓の外を眺めると、いつもと風景の色が違う。いよいよ来る時が来たのだ。緑のまま色を変えない針葉樹と黄、紅、茶の4色に彩られた階下の紅葉たちが、今、緑と黄の2色だけになったのだ。紅と茶は落葉し、風で地面に舞い、清掃員たちの捕獲から免れたわずかな葉だけが、そのままの形で土に溶け地球に還れるのだ。
「最後の一葉が落ちたら、私は行かなきゃいけないの。三日前からわかっていたの。先生もそう言わなかった?」
自分の命の儚さを、病室から見える枯葉に例えたオ―・ヘンリーの短編小説。あなたも泣いた記憶があることでしょう・・・?
この小説の真意は「病苦の哀れ」ではなく「希望」です。
「何かがあの最後の葉を散らさないようにして私が、何て悪いことを思っていたのか教えてくれたわ。死にたいと願うのは、罪なんだわ。ねえ、スープを少し持ってきて、それからワインを少し入れたミルクも・・・」
主人公が死なないようにと、嵐の深夜、老人画家が彼女の病室から見えるように枯れて落ちるはずのない「最後の一葉」を壁に描いたのだ。老人画家は、その時の雨が原因で肺炎にかかり二日後に死すが、主人公に「生きる希望を与えた」という「自己犠牲」と「愛情」も作品のテーマでもある。
三島由紀夫自衛隊市ヶ谷駐屯地で腹を召されてから40年か・・・。ちょうど今の季節か。テレビはモノ黒だったので、僕の脳裏には白と黒の暗黒のイメージしか浮かばない。もし、カラ―で記憶されていたら、また違う思いなのだろう。美しい季節に激しく散る・・・か。
「俺の命もそろそろかなって・・・吸っちゃいけねえタバコくわえ 日本も今じゃクラゲになっちまった・・・とわらった」(長淵剛=西新宿の親父のうた)
三島由紀夫はクラゲになった日本に絶望し自ら絶命した。あれから40年経った日本は、さらにクラゲが繁殖した。
僕は昨夜、上海での仕事の件でどうしてもK会長と会う必要があった。K会長は沖縄知事選挙の兼ね合いで沖縄から帰京する予定だった。K会長の本社の下高井戸まで行くため、僕はDR・M島の許可を取り一時外出した。短い会談は終わり、こちらの要望をK会長は承諾してくれた。
下高井戸から世田谷線(ちんちん電車)に乗り、僕は終点の三軒茶屋へ帰途についた。三茶からはタクシーを拾わなければならない。「うまく拾えるかな」僕はそう思った。大通りまで行けば拾えるのだが、足に負担がかからぬよう、なるべく歩く距離を節約したい。
僕を乗せた世田谷線が三茶駅にすべり込む直前の踏切、一台の空車が踏切待ちをしていた。運転手さんと目が合った僕は、電車内から「ヘイ、タクシー!」と手を挙げた。改札を出ると、そのタクシーはハザードを点滅させ、僕を待っていてくれた。
「あっしも長いことタクシーやってますけど、電車の中から呼ばれたの、お客さんが初めてです・・・」
生きてさえいりゃ、オモろいこともたまにゃある。あっ、固定資産税の催促状がまた税務署からきやがった・・・、こっちはぜんぜんオモろくない・・・。