少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

512 サンタが来たぞ!

深夜というか、あれは明け方だったのかな?午前3時〜4時くらいだろうか?僕は、部屋に備え付けの洗面台の水道の蛇口から勢いよく、水が流れる音で目が醒めた。
コンシェルジェがほぼ1時間おきに、生存確認のために部屋に訪れるのだが、ドアから覗くだけで、中まで来ることはまずあり得ない。しかし、僕は念のために、昨夜の担当コンシェルジュに確認してみた。
「昨日、部屋に入って来た?」
「いえ、入っていませんよ」
「本当は?」
「いえいえ、いつものように覗いただけですよ」
「中に入って水道の蛇口あけたでしょ」
「いえ、そんなことしてませんよ。えっ何かあったんですか?」
「いや、確認です。蛇口あけてなければ、いいんです」
「やだ、教えてください」
「いや、忘れてください。申し訳ない」
「何があったんですか?」
「誰にも言わないでくださいよ」
「ええ言いません」
「実は、夜中に突然、水道の蛇口が開いて、ジャージャーとものすごい勢いで水が出たんです。僕は、それで目が醒めて、蛇口の水を止めて、また寝たんですよ」
「マジですか?」
「冗談で言える話しではないでしょう」
「やだ、怖い。いったい誰が・・・」
「容疑者は3人いる」
「え〜、誰ですか、教えてください」
「まず一人目は、お前だ」
「いっ、いえ、違います。信じて下さい。本当に私じゃありません」
「だとしたら、二人目はオバケだ」
「キャ〜怖い・・・嘘でしょ、嘘だと言ってください」
「君はかつて、この部屋でオバケを見たことがあるのか?」
「ありません、ありません、もう許してください・・・勘弁してください」
「もし幽霊の仕業でないとしたら、考えられるのは、もうあやつしかおらん、それは・・・」
「あっ待ってください、待ってください、もう言わないで・・・、私、怖い」
コンシェルジュは震えながらしゃがみこみ、そのしなやかな両手でまろやかな耳をしたたかに塞いだ。その目は恐怖におののいていたが、うつぶせた美しい顔を、恐る恐るだが、上目づかいにあげて見せた。
コンシェルジュは、僕の口から真実がこぼれるのが、よほど恐ろしかったのだろう、目を潤ませながら、首を横に振った。しかし、僕は真実を伝えなければ、ならない立場にいた。僕はしゃがみ込み、彼女と同じ視線の高さになった。彼女の両手をそっと耳からはずし、彼女の目を見つめた。ようやく彼女は観念したかのように、コクリと頷いた。
「もし、君でも幽霊でもないとしたら、やはり犯人はあいつしかおらん」
「はい・・・」彼女はため息ともとれる、返事をした・・・。
「犯人は・・・犯人は、サンタさんだ・・・」
「キャア〜ア〜ア〜・・・・・・・・」
彼女は腰を抜かした。そして立ち上がり「アンドーさんのバカ〜。だから言わないで・・・っていったのに」と大粒の涙を流しながら、ダッシュで病室を飛び出した。
「いったい、あなたと彼女の間で何があったのですか?」
あわてたコンシェルジュ仲間が飛んできて、婦長さんが、僕にそう尋ねた。
「いや、たいしたことではない・・・」僕はそう答えた。
僕たちは5階の病室の窓から、病院を出て、敷地内にある自分の寮に向かって走る彼女の後ろ姿を、そっと見守った。
「おそらく彼女のところには来なかったのでしょう」と僕が言うと、
「サンタさん・・・・ですか・・・?」と婦長が補足した。