少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

543 私的近況報告15

ほどなくしてKさんが、自家用車で駆けつけてくれた。
2億円プレーヤーはどんなスッゴイ車で来るのだろう・・・。そんな気持ちで待っていたが、彼の車はちょっと高級な4WD。一般庶民でも手の届きそうな車だった。
アムウェイのハイピンレベル以上の人は、会社招待の場合、移動の飛行機はすべてファーストクラスもしくはビジネスクラスだが、自費移動の場合はほとんどがエコノミーを使用する。僕の知っている、個人経営の社長、会長と呼ばれる成功者たちもすべて、同様にエコノミーだ。
かつて、ビル・ゲイツがそれをしていて、僕はパフォーマンスに過ぎないと軽視していたが、実際にビル・ゲイツは現在もエコノミー移動だし、個人事業主という意識が高い人ほどこそ、どこで経費を節減するかに心血を費やしている。傍から見ると「ケチ」と紙一重だが、明快なビジネス哲学だ。
経営者と従業員の決定的な違いは電気代の1円の差にこだわれるかどうか、という一点に尽きると思う。
それはともかくとして、Kさんの自家用車には、そういう意味も込められているに違いない。彼の収入からすれば、手に入らない車種はないはずだ。
車の窓越しに撲とKさんは「久しぶり」と握手をした。
駐車場に彼を案内し、彼が車から降りる刹那、彼の表情が一変した。
「安藤さん、ちょっと待って。大変なことになっちゃった」
「どうされました?」
「カバン、失くしたみたい。ちょっと待ってね」
彼は、車の後部座席をくまなく探したが見つからない様子。栄華の一方、裏をめくれば犯罪都市でもある上海では、彼のような大金持ちはピンポイントで狙われる。尾行されて、ちょっと見せた隙に、物品を奪われることはままある話である。
「お金はいいんだけど、大事なものが入っている。パスポートとパソコン・・・」
決して盗まれてはいけない2大貴重品だ。
「ええ〜」僕も声を荒らげた。なんということだ。
彼はポケットからi−pfoneを取りだし、中国語でまくしたてた。やがて険しい表情から柔和な表情になり「謝謝」と礼を述べていた。
「ああ、よかった、安藤さん、見つかりました。パスポートの申請のために写真を撮りに行ったんですが、早く安藤さんのところに行かなくちゃと思って、あわてて飛びだしたら、そこに忘れて来ちゃったみたい。店の人がすぐに気がついて預かっていてくれました。いや〜びっくりした。あれ失くしたら、私、本当に困っちゃうよ」
中国で財布やカバンを置き忘れて、出てくる可能性は極めて低い。海に落とした指輪を拾うようなもの・・・とはやや大げさだが、それに近いものがある。
ついてる。ツキに恵まれている。僕はそう直感した。(つづく)