少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

589  上海綺譚6

あれからもう一週間が過ぎ、僕の記憶も曖昧になってしまった。
忙しい一週間でブログも更新できず、すみませんでした。
少女の交通事故を目撃したS店長の話では、少女は激しく路上に打ちつけられたそうですが、少女自身が朦朧とした意識の中でストレッチャーに乗せられるのを頑なに拒んでいたそうです。
僕はすぐにその理由がわかりました。上海では救急車は有料です。おまけに病院は事前に費用を支払わなければ手当も診察も治療もしてくれません。少女はそのことを知っていたので、病院に運ばれること、そのものを拒んだのです。少女をはねたタクシーと少女のどちらに過失があったにせよ、とりあえず、少女か家族が病院の費用を立て替えねばなりません。服装からして裕福とはいえない、少女の心情は痛いほど察することができます。救急車はタダ、病院では保険が効く、というのは、あくまで日本国内の常識であって、日本以外ではまず通用しません。これだけは唯一、日本が世界に誇れる医療システムだと断言します。
思い起こせば25年ほど前、東京は葛飾区の路上で、僕は運転中に飛び出して来た少年を跳ねたことがあります。僕は車を止め、少年を救出しようとしましたが、少年は逃げてしまいました。僕は追いかけ、少年を捕まえました。「どうして、逃げる?病院へ行かなきゃダメじゃないか?」と言うと、少年は「お母さんに叱られるからイヤだ」とダダをこねだしました。まあ、これくらい元気なら安心だ、と思いながらも、ぐずる少年を無理やり近くの病院に運び、医者に事情を話して診察してもらいました。幸い頭など打っておらず、尻と手に軽い打撲を負った程度でした。それでも帰り道、少年は僕の手を握り「たのむからお母さんだけには言わないで」と涙まで浮かべ手を放そうとしません。しかし、そういうわけにもいかんので「お兄ちゃんが叱られないように、うまくお母ちゃんに言ってやるから安心せい」と言って送り届けました。
翌日、お見舞いをかねて少年の家に伺うと、特に問題もなかったみたいです。お見舞いに怪獣のプラモデルを持っていってやると「わ〜い」と言って少年はトンズラしてしまいました。今ごろは立派な当たり屋に成長していることでしょう。そんなことをふと思い出しましたが、あの少女は大丈夫でしょうか?今となっては、もうわかりません。(おわり)