少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

603  どうなる「G」?8

3月5日。K会長は2泊3日の上海出張を終え、帰国する。
「とりあえず、500万、送金するように、もう日本の事務所に電話入れといたから、あとはあんたたちで考えてやって。それで続けるのもいいし、閉めるでもいい。とにかく、もうそれが最後だから、その範囲内ですべてやって。それで、いいでしょ」
「ありがとうございます」僕とS店長は両手で会長の手を握った。
だが、僕は心の中でつぶやいた。「それで、いいでしょ・・ではない。それだけではダメなんだ・・・と」
仮に僕とS店長らが500万円を出資して1000万円の増資になったとしても、バカ高い家賃をなんとかしなければ、結局、店は潰れてしまう。単なる延命措置に過ぎない。未来の見えない苦しみをいたずらに長引かせるだけのことだ。
この2カ月弱、おそらく1年分くらいの経験をし、情報を得た。上海における大繁盛店、撤退店、復活店を営業の合間に視察し、中国人、日本人に話を聞き、カラクリの裏側を把握した。ただ、カラクリがわかったからと言って、それが実行できるかとなるとそはいかない。結局、たどりつくのは、地元の強力な人脈だ。それがなければ、ほとんどが潰される。飲食店経営のノウハウはこの道15年、37歳のS店長から仔細に教えてもらった。
さて、会長から500万円の有難い追加融資を思いがけなくも得ることができた。次は大家との家賃値下げ交渉。16万元から4割引きの10万元。常識的に1〜2割引きなら交渉に応じるだろうが、相手側から見れば無茶な話である。しかし、これは最近になって聞いた話だが、契約時当初
の家賃はなんと198000元(約260万円)だったそうで、店舗の工期に10カ月もかかり、それだけでカラ家賃が2600万円かかったことになる。つまり初期投資1億5000万円の理由はそんな部分にもある。さらに備え付けの家具や備品の単価を聞かされ、法外の高さに驚愕した。
さすがの僕もこんな無茶苦茶な話は聞いたことがない。言葉を変えれば酷い詐欺だ。悔しい。
今となっては根回しもヘチマもない。僕とS店長は中国人マネジャーの王さんを連れ、大家の秘書に、面会を申し入れた。会長が帰国した翌々日の3月7日、月曜日のことだ。家賃値下げ懇願申請書を王さんが中国語でタイプし、僕が今後の展望と家賃値下げの依頼を口頭で説明した。
最初は友好的だった秘書の彼女だが、金額を提示したとたん、あきれ顔でこう言った。
「こんな金額、ボスに報告できないわ。こんな金額を提示したら、この紙きれを受け取った、私自身が怒鳴られる。帰ってください」
「しかし、この紙きれをボスに届けるのが、あなたの仕事でしょ。この金額はあなたが提示した金額じゃない、我々が提示した金額なんだからんだから、あなたが怒られるわけないじゃない」
「確かにそれもそうね、わかったわ」
ああ、ホンマに面倒クセー、そこまで説明せにゃアカンのかい?つまり、中国ではそんなことが日常茶飯事なのだ。
僕とS店長と王さんは秘書に紙切れを渡し事務所を後にした。
「秘書ですら顔を真っ赤にして、あそこまで怒る金額だから、やっぱ無理かもな・・・」と僕が言うと「かなり厳しい状況ですね」とS店長が続いた。「安藤さん、これは無理です。ぜったい無理です。大家さん、絶対納得しない、そう思うです」と王さんが肩を落とした。(つづく)