少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

595 再会上海8

「店が潰れた、とは聞き捨てならない。どういうことなの?」
「実は一年間、自分でスナックをやったんですけど、上手く行かなくて、潰れちゃったんです。もし、カレシとかいれば、他で働かなくても良かったんだけど、自分ひとりの力でやっていたから、もうお金が全部無くなっちゃったんです。だから、今は雇われママ・・・」
彼女は努めて明るく振る舞ったが、その心中は表情とは裏腹なはずだ。僕らも全く同じ立場だから、いや、金銭的な打撃を受けていない僕らに比べたら、自費を投入し、それを失った彼女の方が、はるかに辛い立場にいるだろう。
「そうだったの、大変だったね。でもここでAYちゃんと出逢ったのも、きっと何かの縁なんだね」
「えっ、どうして?」
「だって僕らのお店も潰れちゃったんだもん。ね、店長」
「AYちゃん、これ本当の話なんですよ。だから僕らもAYちゃんの気持ち、よくわかるんです」とS店長。
「えっ、いつ潰れたんですか?」
「AYちゃんはいつ?」
「私は3月26日で締めました」
「ほら、だから、縁だって言ったでしょ。僕らは3月27日。つまり昨日だよ。AYちゃんはおとといだね。一日先輩やん」
「それ本当ですか?」
「そうだよ。店が潰れた者同士で乾杯しようか?」
「はい、よろしくお願いいたします」
この広いんだか狭いんだかようわからん上海で、また人と人が出逢った。イケメン店長が隣の女の子にあれこれと話かけられている隙をついて僕は「じゃあ、出逢った記念に一緒に唄おうか?」「もしかして、雪の華?」「もちろんそうだよ」「私、きっと上手く唄えない」「大丈夫、だって一番好きな歌なんでしょ」
かくして僕はAYちゃんと「雪の華」をデュエットした。
その後、僕ら二人がどうなったか?
そんなこと、ここで書けるわけがない。
気がつくと、僕とS店長は男子2人、深夜の中華飯店でほとんど美味しくない炒飯をむさぼっていた。