少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

693 牛丼戦争再び1

アニキ部長(仲村トオル)の吉野家270円か、極楽ファミリー(加藤浩次)のすき家250円か。この20円の格差に人生の機微を感じる。
7/29日金曜日、僕はこの目で第三次牛丼戦争の行方を確かめるために、戦場へ赴いた。
軍人病院での診察帰り、まずは渋谷・道弦坂上すき家に潜入する。もともと狭い店内は合計27席。しかも昼時、最悪のラッシュアワーに来てしまった。遠目から見ても人々が店内から溢れ出している。しかし、もう後戻りはできない。
店外で待つこと1分、僕はすんなり空いたばかりのカウンターに滑り込んだ。当然オーダーは牛丼並250円一杯。お隣に座る茶髪ネーちゃんは並牛丼に一番安いおしんこセット(味噌汁付き+70円)をさりげなくオプションオーダーした。流石に慣れた様子でオーダーによどみがない。しかし、ここで浮かせた金で109でセシルマクビーの服でもせしめようという魂胆がみえみえのファッションだ。まあそれはそれでいい。彼女にも都合というものがあるだろう。
問題なのは、右横に座った30代前半のサラリーマン風情。250円並牛丼に見向きもせず、どうだとばかりに、ひつまぶし牛丼450円を躊躇なくオーダーしやがった。このサービス期間中にそれはないだろう。掟破りとはお前のことじゃわい。すき家さんの厚意をなんと心得とるのか。
しかし、他のテーブルが気になり、振り返って見渡せば、ひつまぶし野郎が意外と多い。というか、牛丼並野郎が意外と少なく、少し気恥ずかしくなる。なんで俺は50を過ぎて牛丼並250円なのか、と自問する。
気づくとレジにジャンケン負け組が列をなしている。職場のジャンケンで負けた奴らが代表で御持ち帰り牛丼を買いに来ているのだ。4個、5個、中には6個というツワモノもいた。こいつらは全員牛丼並250円組だ、俺が言うのもなんだがザマーミロ。
しかし、これで謎が解けた。テイクアウトに関しては、オフィス内で食べるのだからプライドもへちまもあるまい。しかし、素顔をさらして果敢に店内で攻める組にはささやかながらプライドがある。すき家並牛丼は250円と偉そうなこと言っても、もともとが280円。言うなれば、たかだか30円安。これに目がくらんでプライドをかなぐり捨ててはなるものか、いやむしろここでひつまぶしをオーダーすれば男も株も上げ、なにより、牛丼並250円人間をチラ見して、高い場所から見降ろすことができるではないか。しまった、そういう作戦があったのか。僕にはそんな余裕がまったくなかった、してやられた、というわけか。
強いて言うなら「すき家に勝って、ひつまぶしに負けた」という心境。僕は屈辱の250円を握りしめ、支払いを待つレジの列に並んだ。食い逃げするわけではないので堂々としていればいいのだが、前後をひつまぶし野郎に挟み撃ちされているのでは、という劣等感に僕の繊細な精神が支配される。せめておしんこセットプラス70円を、意地でもいいからオーダーしとけばよかった、と後悔するも先に立たずというやつだ。
財布には優しく、精神にはきついというのが僕のすき家の印象だった。
(つづく)