少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

831 時代掃除

笹塚(正確には世田谷区北沢)に家を建てて15年が過ぎた。木造建築だから寿命の半分くらいだが地震さえなければ、あと30年は楽勝だろう。
注文設計のこだわりの家は漆喰と木だけの自然住宅。床板は自分で中国から輸入した竹材を使い、灯り取りのため窓を大きくした。
一階はカウンターもあるアンティークバーにもなる。半地下は書斎(蔵書2000冊くらいでもう入りきらんがまだまだ買う)とワークルームとトイレ。半二階に和室と風呂。二階がキッチンとリビングとサンルーム。
半三階に洋間とトイレと広めのクローゼット兼食庫。三階が広いサンルームとユーティリティー。玄関前には小型車なら3台置ける駐車スペース。狭い土地に、設計の先生が何度もプランを練り直して作り上げてくださった。住宅ローンもやっとこさ半分返した。
完成した時には週刊新潮のグラビアにも掲載され、まだ、知人になる前の地元衆・五十嵐隊長も家の前を通りかかり、「おっ趣きのある家ができたな」と感心してくれたそうだ。
しかし、15年の歳月は長い。若かりし頃はロン毛をなびかせ、六本木あたりを風切肩で闊歩していた五十嵐隊長も、今や脂肪が付き過ぎたキラー・カーンのような風体になったごとく、我が家にも荷物という脂肪がたっぷり付いてきた。
「いらないものは全部捨ててくれ」と日々、コレクターではない住人どもががなりたてる。うる星やつらだね、まったく。
とは言え、きゃつらの気持ちもわかる。
僕とていらないものがいっぱいあるのだ。自分の趣味半分、売るつもりで仕入れた品物が半分。下北、代々木上原、横浜の店舗の残骸をようやくここまで処分したのだが、まだ「捨てる」勇気はないのだよアケチくん。
というわけで、本日、檜の一枚板のテーブル(こいつは高かった)と水屋箪笥の大物を二階から一階に降ろし、階段箪笥と安藤家に伝わる重いガラス付きの本棚をサンルームに移すミッションを敢行した。当然、一人ではミッションインポッシブルな作業。非番のトム・クルーズを呼んだら、朝9時、五十嵐隊長がバイクで来てくれた。普段はノーヘルなのに、この日は「さすがに寒いから」と防弾ではなく防寒用のヘルだそうだ。
50過ぎのおっさん二人、ヒーコラ言いながら肝を冷やす。腰が痛てえ、握力がねえ、ヒザが、肩が、また腰が・・・。「それよりこの隙間に入らねえと手が届かねえ」とデブ二人。「たぶん5年くらい前までは普通に作業できたのに・・・」と過去の栄光を振り返る。
北五商店街の三喜屋でかつ丼とそば定食。隊長はたぬきを、僕はきつねを。この店は常連だが、セットを頼んだのは初めてだ。で、なぜかそばがあるのに味噌汁も出てきた。
不思議だなあ、嬉しいけど、でも両方飲んだら塩分摂り過ぎかなあ・・・と思いつつ僕は飲んだが、隊長は残した。「何故」と聞くと「だって蕎麦のつゆがあるから意味ねえじゃん」と。意味があるかないかと言われれば微妙だが、味噌汁を残すとは余裕を感じられた。吉野家なら別オーダーで50円だぞ。
午後の作業は早くしないと陽が暮れる。通りすがりの人々が「何屋さんですか?」と声を掛け、作業を中断させる。「何屋でもねえ、作業中だ」と言いたい気持ちを抑え「いやね・・・」と丁寧に話すからまた陽が傾く。
「あっオレ干してきた布団仕舞わなくちゃいけねえ」と隊長が帰還体勢のブロックサインを出してきた。「あんた、自分ちの掃除もしないで、なに、人んちの掃除手伝いに行ってんのよって、出がけにかあちゃんに怒られたんだ・・・」と隊長。悪いことをした。バイト料を渡すと「金の無いやつから、金もらえないないよ」と言い「代わりにこいつ貰っておくよ」と言って「仮面ライダーV3」の大型人形を手に取った。
「まあ3000円くらいにゃなるだろう」と隊長。
「おいおい3000円はねえだろう。せめて5000円。いい時なら15000円は行けたやつだぜ、こいつ」と僕。
夕暮れの世田谷区井の頭通りを、バイクの後ろに仮面ライダーV3をくっつけて走っているおっさんを見かけたら、それが五十嵐隊長だ。