少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

865 さらば豚めし2

「勝負は勝った、と思った瞬間が一番危険なんや・・・」
短い期間ではあったがヤクルト時代の野村克也監督を取材した経験のある者にとって、取り返しのつかないミスを犯してしまった。
笑いたくば、笑ってもらってけっこう。この間の抜けた男を・・・。
確かに各店舗で売り切れ続出中・・・という情報はネットでゲットしていた。されど、それは新宿や渋谷などの繁盛店の話で、まさかここ笹塚十号通り店にまで及んでいるとは・・・。
本来なら本日1/8のランチに行く予定だったが、ラグビー大学選手権が始まる前の午後一時、自宅の台所が空いた。その一瞬の虚をついて、イタリア麺を茹で、茹で上がりの麺にガーリックマーガリンだけを絡めたペペロンチーノ風スパを掻き込み100円ランチを済ませた都合上、松屋のさよなら豚めしは晩餐に回すことにした。これが痛恨の判断ミス。SO安藤のタッチキックはタッチを割らず、相手のWTBの胸にすっぽりはまってしまった。
ラグビーが終わり、春高バレー下北沢成徳高校の惜敗にもらい泣きして、あまりの寒さに耐えかて、一時間ほど布団にもぐった。
そろそろ行かねば売り切れてしまう、と眠気を我慢してコートを羽織り、寒風の中、いざ十号通りの松屋へ。頭の中は当然豚めし一色。選択肢は並か大盛りかの二つに一つのみ。時刻は7時少し過ぎ、流れ的には問題ない。
が、突然、嫌な空気が立ち込める。普段ならしなびた屁垂れどもの巣窟であるはずの時間帯。なのに、店内にはひとっこひとり客が居ない。
むむむ、まさかこれは・・・。殺気を感じた。
ない。すでに撤去?いや待てよ、見落としか?落ち着いてもう一度確認せよ。自分に言う。されど、無い。ボタンが無い。食券の販売機に、すでに豚めしのボタンがない。が、念には念を入れて見る。店員に尋ねる。
「すみません、本来なら今日までなんですが、全体のバランスで、当店のような弱小な店には、あらかじめ配分が少なくて、昨夜の段階でもうすでに・・・。ご迷惑をおかけいたします」
笹塚十号通り松屋、1/8午後7時30分ころ、販売機の前でヒザをつき、立てなくなっているグランドコート姿の男がいたとしたら、それが僕だ。
もはや引き返すことはできない。えーいままよ、とばかりに僕は「ネギ塩豚カルビ丼350円」を所望。焼けクソの大奮発だ。
それにしても客がひとりも居ない松屋で食すのは生まれて初めてのこと。そらそうだろう、明日からキャンペーンで320円の牛めしが260円で食えるのだ、今日喰う愚か者は笹塚には居ない。
おっとここでアベック登場。やっぱ豚めし狙いだ。僕と同じように店員に聞き、店員はさっきと同じ答えをアベックにする。僕は背中で同じ悲しみに触れるアベックの悔し涙と無念を見る。アベックは悲しみにかすれた声で牛めし2つを持ち帰りにする。この悲しみと切なさを共有することによって、アベックが二人で壁を乗り越え、小さなアパートで絆をより深めてくれれば良い、と、僕は背中で願った。
食べ終えて、ちょうど店を出るとき、超ロン毛のいささか不気味なアニキが入ってきた。嗚呼、こいつも同じ悲しみを味わうのだろうか?もうたくさんだよ、こんな悲劇は・・・。
再び寒風の中、わずか30分の間に反転した悲喜劇に、僕は冒頭のノムさんの言葉を思い浮かべた。たかが豚めし、されど豚めし
さようなら、そしてありがとう。いつかまた会おう。釈迦の教えが正しいのなら人生は輪廻転生、生まれ変わって、きっとまた君に会える日がくることだろう。