少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1036 スキルス性胃癌

癌の中でも進行性で、最も生存率、治癒率の低い、悪性腫瘍のひとつがスキルス性癌。浸潤性で広がっていく。アナウンサーの逸見政孝さんが、襲われた癌と言えば、おわかりいただけるだろうか?
今、知人のOさん(57歳女性)が、その病と必死で闘っている。
「あと8カ月です」と医師から余命宣告されたのが、昨年の6月。今年の2月で、その期限は切れたが、彼女は今も闘っている。
4月の中旬には大好きなパリへも旅行した。飛行機での12時間、「はじめて飛行機がこんなにしんどいもんかと感じたわ〜」と彼女。
僕はいつも、もし返信がなかったらどうしよう・・・と不安と恐怖にびくびくしながらCメールを送る。
本日5/14、日本医科歯科大学に入院中の彼女を訪ねてきた。
国電御茶ノ水駅を出て左に行くと、僕が通った明治大学がある。幽霊学生だったから、駅前が懐かしいとか、そんな感情が沸かない。唯一、行きたい場所は、中華料理の「味一」。あの280円の中華丼がどうしても食べたいが、今はもう無い。同世代の明大生なら知っているだろう、薄汚れた中華屋で、女子がひとりで入るにはデリンジャラスな店。
そして右に行けば、日本医科歯科大学、順天堂大学医学部、湯島天神とインテリジェンスの街になるのだが、僕は学生時代、駅を右へ折れた記憶がない。なんでだろ〜、なんでだろ〜の世界だが、明大と医科歯科大の距離は松井秀喜がホームランを打てば届くほどの距離だ。
さて、本日は彼女に朗報を伝えに来たのだ。
霊波之光教会のTさん(女性=地区の班長さん=世話人)と午後4時、改札で待ち合わせて、彼女の病室に向かった。
かなり痩せてきた。時々、胃のあたりを押さえて苦しそうな表情も見せた。帽子を少しだけずらし「ほら、こんなんよ」と髪が抜け落ちた頭皮を僕にちらっと見せた。
「パリ、どうでした」
「うん、雨ばっかでね。ぜんぜんやったわ。それに食べれんし。イマイチやったわ。でも、人を案内すること好きやし。それができただけでも良かったわ〜」と友人2人を案内した彼女。
本当は辛かったと思うけど、途中から楽しい話題に無理やり変更してくれた気遣いに、その人の優しさを知る。
「ごめんなさい、ちょっともどしてくるわ」
デイルームの椅子の腰かけてすぐに、移動用の機械を身体につけられたまま、彼女はすぐに席を立った。(つづく)