少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1222 さいごの東京タワー5

ずいぶん時間があいてしまいました、すみません。
「さいごの東京タワー」(7/5=no1,2,3。7/6,no4)の続きです。

以前、入院していた病院のDr・Rから「ドナーが見つかった」との報を受け、僕と移植希望患者のYさんは、二番目にお世話になった病院を出て、タクシーでDr・Rの待つ病院へと向かった。
Dr・Rに対して、Yさんは日本で待機中のシナリオなので、僕らは辻褄合わせのため、少し時間を調整した。そして午後8時少し前に病院へ、あたかも、いま、日本から着いたというばかりの顔をして、Dr・Rと面会した。
「Yさん、おめでとうございます。素晴らしいマッチングです。奇跡です。まるで一卵性双生児と同じ確率です。僕の医師人生の中で最高のマッチング。10万人にひとりの可能性。白血球HLAの適合が99・9%。これ以上のマッチングはあり得ません。長い間、待っていた甲斐がありましたね」とDr・Rは、先ほどの電話と99・9%同じ内容の話をニコニコ、ニコニコしながら僕らに話してくれた。
先ほどの電話と違う0・1%は「Yさん、もう大丈夫です。もう苦しまなくて済みます。必ず私が、手術を成功させてみます。安心してください。このマッチングで失敗はあり得ません」と、Yさんに直接、そこまで言い切ったということだ。
僕とYさんもこの一言に救われた。本当に涙が出そうになった。
日本なら平均7時間(麻酔をかけてから閉腹するまで)はかかる手術だが、Dr・Rなら3時間ほどで終了する。最多で年間200件の移植手術を行うからスピードが違う。麻酔の量も少なくて済むので患者の負担も少ない。
手術は当然のように成功した。しかし、Yさんの場合、重度の腎膿疱(膿が腹膜に貯まり、腹水のようになる)も抱えていた。ただ、これは「腎臓機能さえ回復すれば、自然に排出される」というDr・Rの判断で処置はしなかった。
術後、Yさんは順調に回復したのだが、腎機能の活動があまりにも急激過ぎて、他の臓器が驚いたのと、腎膿疱の影響なのか、激しい腹痛に悩まされた。
そのため、かなりの量の鎮痛剤が投与され、意識が混濁した状態にも陥ったが、腎機能の回復はすさまじかった。
術後、約30日の入院を終えたころには、痛みも完全に消え、飲食も自由にできるようになった。もう、あの「修行」という「人工透析」を二度と受ける必要はない。癌をはじめとする、他の病気を併発させる危険性のある「免疫抑制剤」の投与を最低限度に抑え込むことで、そのリスクを最小限にとどめることができた。
僕の主観で言えば、このように、患者にとって素晴らしいチャンスを日本の厚生労働省と医師会は患者から奪うことになる。この問題については、この項の趣旨とは違うので、ここで留めておくが、極めて遺憾な問題である。
僕と、Yさんは、広州を離れ、関空に向かい、Yさんの奥様と息子さんの出迎えを受けた。翌日、出発前から、あらかじめ予約しておいた日本の医師の元へYさんを送り届ける。そこまでが、僕の仕事だった。(つづく)