少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1224 さいごの東京タワー最終章

しばらくの待ち受け音声のあと、意外にも早くYさんが出られた。
「おお、安藤はんか・・・。すんまへんな、ご無沙汰してもうて・・・、なかなか電話もかけれなんだんや」
Yさんが電話に出られたことに、安堵はしたが、いささか沈んだ声は気になった。
「実はな、・・・なんだや」
「えっ、すみません、いまちょっと聞きとりにくかったんですが、どなたかお亡くなりになったですか?」
「・・・連れ合いや、わしの嫁はんや」
「えっ奥さんですか?」
「そうやがな。膵臓癌や。また、なんでよりによって、そない一番面倒なとこなんや・・・ってな。見つかった時には、もう手遅れや・・・」
「いつのお話ですか?」
「一週間前や、亡くなったのは。そやから、えらいバタバタしとってな。あんたにも連絡せなあかんと思っとったんや・・・。すんまへんなあ」
「いやいや別にそんな・・・。それより奥さん、えらい健康的な感じだったじゃないですか」
「そうや。病気ひとつせえへんと・・・。だから、何でや・・・て感じや」
「こんな風に言ったら失礼かと思いますが、僕なんかは奥さんよりYさんのほうが心配でした」
「ほんまや。順序が逆やねん。わしも女房にはえらいこと迷惑かけたさかいに、楽させてやりたかったんやが・・・。こんなことになってもうてな」
「じゃあYさんも、看病とか大変だったんでしょ」
「せや、きつかったけど、そらあんた、そんなこと言っとる場合じゃないからしゃーないわ」
「そうでしたか、そんなこととは知らずに大変ご無礼いたしました」
「また落ち着いたらゆっくり電話するわいな。あんたもからだ気いつけえや」
「はい、ありがとうございます。Yさんも・・・」
「せや、それからな、実はこの前、女房と二人でな、東京に行ったんや。東京タワーを見にな。あんたにも電話しよ思ったんやけどな、車椅子やらなんやらでな、それどころじゃおまへんかったんや・・・・」
死を前に、Yさんの奥さんは「新婚旅行」で行った時に見た「東京タワー」をもう一度、見てみたかったそうだ。
人生でたった二回の東京見物。スカイツリーではなく東京タワー。
医者の反対を押し切った。
「女房の最初で最後のわがままや。見逃しといてんか〜」
そんなやりとりを病院側とした。
二度目の東京見物は「夢と希望」にあふれたものではなかった・・・、いや、これは僕の勝手な推測だ。Yさんの言葉でも奥さんの言葉でもない。
「新婚旅行」の時よりも、もっと「幸せが光輝く」東京タワーが瞳の中にあればいい。
二人の人生の何も知らない。奥さんの顔さえ、いま、はっきりと思いだせるわけでもない。車椅子を押すYさんの後ろ姿の残像が意識の中につくられているだけである。
モノ言わぬ鉄の塔は、電波を送信するためだけではなく、多くの人々の中に、それぞれの思いを込め、深く刻まれている。
またひとり、優しきひとが宇宙へ帰られた。そんな宇宙から、やっぱり見られているのだろうか、東京タワー・・・。
最後に、僕の小さなお友達、小3の麻梨花ちゃんの詩を紹介したいと思います。


            夜空

        キラキラと
           お星さま

        ピカピカと
           光をくれるお月様

        花火がようく見える
           真っ黒なお空

        夜空はとても
           楽しいね     (麻梨花

この項、了。