深夜 暖を求めてコンビニに行く季節
舗道にある 幼子用の低いすべり台に大人が腰かけている
ホタル族かな いや このあたりに高層マンションはない
ため息半分 けむり半分 吐く息が深刻そう
嗚呼 汝も 居場所のない 帰宅困難者
國（陣地）取りに破れ 夢朽ちた 老兵よ
我とて同臣 今宵 一献傾けて 傷でも舐めようぞ
蹴球（サッカー）なんぞ 命までは獲られるまい
我は闘球（ラグビー）にまみれた 荒くれ者
闘球は点取りゲームに非ず
魂（楕円球）の略奪と 陣地獲りを競う戦
生きて還れるとは 闘った者にしか解らぬ恐怖
そんな死闘のシーズンが到来した
生まれ代わったら もうやらない
老兵の肺を通過して出た煙が 昇天する途中で分散し
すべり台のてっぺんあたりで流された
けむりは吐いたが ため息は また蓄積された
老兵が仰ぐ夜空に あしたは見えない
なにはともあれ 一つぶの幸せを
よれた背広のポケットに こころのキャラメル落としましょ
明日は我が身か その姿
コンビニ帰りに彼は消え 地面の吸い殻数えてみる
家に帰ると居場所がない 住宅ローンは誰のため
冷蔵庫のドレッシングはビニルに入れられ隔離され
棚の食器は分別され 生乾きの洗濯物は床の上
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い 問答無用の皆殺し
さりとてこの世は楽しくて
西に友あり東に師あり 天に神あり足元に地雷あり
こころの姫は かぐや姫 いつも月から笑ってる
強い酒でも流し込み あの娘が来るのを待ちましょか
あの娘に会いに 行きましょか
