少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

205  西船橋のおふくろの唄

♪〜古いか新しいかなんて、まぬけな者たちの言い草だった。俺か俺じゃねえかで、ただ命懸けだった。酒の飲めない俺に、無理やりとっくり傾け、男なら髪の毛くれえ、短く切れってまた怒鳴った〜♪ 僕の持ち歌で長淵剛さんの「西新宿の親父の唄」です。
昨日(22日)、NYから戻りました。
赤坂でワインバーを経営する知人から、そこで経営に参加しないか、という誘いがあり、その関係でK・Yさんと落ち合うことになっていました。K・Yさんは、僕がワインバーの経営者に紹介した女性で、彼女が店で働けるかどうかによって、方針が決まるので、重要人物です。
成田空港から大量の荷物を持ち歩くので、打ち合わせは京成線の沿線でお願いしたいという理由から、待ち合わせを彼女の住まいの最寄り駅である京成「西船橋」にしました。「でも、西船駅前には何も無いのよ」と彼女は助言してくれましたが、何も無いと言ったって、赤ちょうちんの一軒くらいはあるだろう・・・とタカをくくった僕でしたが、降りてびっくり、本当に何もありませんでした。
午後7時、陽はとうに暮れ、そぼ降る小雨は冷たく、駅前広場は駐輪自転車の洪水で、店の灯りらしきものはまったくありません。人影もなく、僕は先日書いた上郷のトヨジがれに行く暗闇の田んぼ道を思い出しました。追いはぎか、一反もめんが出てきそうな気配すら感じました。肝心のK・Yさんは「出先に携帯忘れて取りに行ってた〜ごめ〜ん急いで行きま〜す」と1時間遅れの連絡。僕は最終の時刻を確認しようと、ひとつしかない小さな改札から駅員さんを呼びましたが、反応なし。自力で調べようと思い、駅員室の中の時刻表をごそごそいじっていると、ようやく年老いた駅長らしきおじいさんが出てきて「何ですか」と対応してくれました。
途中、町屋駅で地下鉄千代田線に乗り換える旨を伝えると「ウチは地下鉄やってないから、地下鉄は自分で調べて」なんて言われてまた孤独になりました。
K・Yちゃん来ないから、先に店を探そうと思い、誰かに聞こうにも人がおりません。とりあえず冷たい雨の中線路沿いに歩くとぽろぽろと4〜5軒小さな店がバッテラ寿司のような感じで並んでいました。中から美声が聴こえてきたので、定食ありますと書いてある店のドアを開けると美女が演歌をカウンターで。よっしゃここで待ったらんかい、と決めるのですが、入口が狭くて、僕の荷物どころが僕そのものが入れるかどうかという感じ。ごそごそやりましたが、ちょっと無理みたい。僕は「また出直します」と言い、一旦はドアを閉めましたがカウンターの中からママさんが「ダイジョブダイジョブ」というので、ドアをこじ開けて中に入れさせてもらいました。
演歌の美女に「ブティックのママさんですか?」と尋ねると「見た目と全く違う仕事です」と言われ「下水管の工事とか?」と聞くと「当たり」だそうです。カウンターの中からママが「化粧品の仕事もしているのよ」と言うので「じゃあポーラー化粧品ですか?」と聞くと「また、当たり、何でわかるの?」とお互いテキトーなやりとり。安城北中の同級生の角川のばあちゃんが、昔、80歳のポーラレディでした。自転車の後ろの籠に化粧品を詰めて、安城の田舎の田んぼ道を走ってた姿を思い出しました。ばあちゃんは三河地区でトップのセールスレディだったのですが、中学生の角川にしょっちゅうこ遣いをせびられていたみたいです。そのせびったこ遣いで、僕もよくジュースとかおごってもらいましたけど。
もうひとり、カウンターの奥にいた客は午前3時から仕事というトラックの運転手さん。明日仕事だから、もう寝なきゃと4合酒をひっかけて早々と帰宅されました。
さて、遅ればせながら店の名前が「おふくろ」。だから「西船橋のおふくろの唄」。おふくろのママさんは宮城県出身の料理名人。定食の米は宮城米の「ひとめぼれ」。定食650円はボリューム満点で「ごはんを残さず食べたいから、おかずの量を減らしてくれ」という客もいるそうです。「うちは高い米を使ってるからね」とママさん。会社帰りにビールもたのまず定食だけ食べに来た青年もおりました。入口に僕の荷物が置いてあったので、申し訳ない、裏口から彼は帰りました。
付きだしのもつ煮込みも美味しかったし、遅れてきたK・Y嬢もムシャムシャ美味しい美味しいとよう食べておられました。
そんな「西船橋のおふくろの店」、とても気になったのは、カウンターに遠慮深く貼られた手書きの注意書き。「おしぼりで鼻かまないでください・・・ティシュは(カウンターの)下にあります・・・」。
そうなんです、多いんだよね、おしぼりで鼻かむ奴。でも、こんな貼り紙初めて見ました。小さな感動です。
昔は中山競馬帰りの荒くれどもがよく立ち寄ったそうですが「ネットで馬券が買えるようになってから客足がさっぱりよ」とママさん。う〜ん、丹下段平のようなおっさんがパソコンに向かって馬券を買う姿は想像しても想像できませんが、どんなんだろう?