少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

293  ホッピー苦戦

こっちを立てれば、あっちが立たず・・・というお話。
ホッピーとの出会いは高校を卒業した18歳の春。安城から上京して西早稲田毎日新聞販売店で住み込み店員をしながら早稲田予備校に通っていた頃。受験生だが、給料日(1カ月5000円=家賃と食事はタダ)には新聞配達仲間と飲む。全員受験生で銭はない。生ビールなど、高級品は夢のまた夢だ。僕らはビールジョッキに氷と一番安い焼酎を半分入れ、そしてホッピーを注ぐ。生ビールの半値で上がり、それでも雰囲気は生ビール気分。ホッピーは季節労働者や貧乏人に限定された飲み物で、僕らがギリギリ行ける安酒屋にしかおいてなかった。しなびた婆さんか、薄汚れたオヤジが経営するような、そんないい加減の店だった。
ところが昨今、やり手の女社長が次々とホッピーを仕掛け、女性雑誌やテレビに出まくり、都内ではド派手な宣伝カーまで走らせ、若い女性を中心に一世を風靡した。
キリンフリーなど、ノンアルコールビアが登場する昨年まで、僕はスーパーでホッピーの白と黒を常に6本ずつ計12本買い、ビール代わりによく飲んでいた。ホッピーの長点はボトルなのでアルミ缶飲料よりはるかに美味しく感じられること。欠点はボトルなので重くて運ぶのが面倒くさい。空き瓶の処理にも困るという点。まあ、それでもすべてをひっくるめても僕は、長年のホッピーファンでした。
昨11日、都内で居酒屋100店舗を経営するT社長をふらりと訪ねたところ、馴染みのホッピー社の若手女性社員Cさんが深刻そうな顔でT社長と面談していました。
理由を聞くと、件のノンアルコールブームと角ハイボールブームでホッピーの売上が大苦戦しているとか・・・。考えてみりゃ、そらそうだ。僕らのような消費者はサントリーの「ALL-FREE」が美味いだのと無邪気にのたまっていればいいわけだが、市場を奪い合う現場の人間にとってみればまさしく死活問題だ。
T社長がシビアに言う。「客のニーズに応えるのが我々の仕事だから客が要求しないものはそんなに置けない。しかもホッピーはボトルだから冷蔵庫の置き場のスペースを取る」。ビジネス的に言えば、まったくその通りである。
T社長のもとに、このあと、サントリーの重役3人が面会に来るという。理由はホッピーと似ているが、ホッピーとは逆に角瓶がハイボールブームで売れに売れ、いよいよ在庫が無くなるそうだ。そこで重役連中が「角の代わりに、なんとかトリスを置いてくれないか」というお願いだそうだ。だが、T社長の回答は決まっている。「お客さんがトリスを要望するなら入れるけど、そうでない場合はダメだ。角瓶との味の差がありすぎるから難しいと思うよ」。それも当然である。
会社帰りのサラリーマンやOL、学生やフリーターらが毎晩毎晩来る日も来る日も無邪気に乾杯する至極のひととき。その裏舞台では、各職種の営業マンたちが、日々、こんなふうに凌ぎを削りあっているのです。これが東京。
それに比べ、名古屋牛乳の、あの、ぬるま湯どっぷり早く5時にならないかな営業に腹が立つのです。せっかく美味しい牛乳なのに、不味く思えてしまうのは営業マンの質の悪さに他なりません。何にせよ、頑張っている人と仕事をしたり取引をしたりしたいですからね。
さて、ホッピーも角ハイボールも太古の昔から在り、味もスタイルも何も変わっていないのに「ブーム」という名の仕掛けだけで、こうなるのだという「マスコミ主導=消費者の主体性の曖昧さ」の象徴的な現象です。少数派としては歓迎しかねる流れです。