少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

345  リーさんの店

リーさんとは、僕が中国に来てからの古い付き合いです。年齢は30代前半、男。だから、彼がまだ20代半ばのころからの付き合いです。
彼は僕が住む祈福新村からバスで20分くらいの市橋という街のホテルのボーイでした。ここのホテルは日本人出張者が一番多く利用するビジネス風ホテルです。一番安い部屋は1泊200元(2400〜2600円くらい)。
古いホテルですが、シャワーのお湯は出るし、まあまあ安全だし、パソコンも通じるし、NHKも映るし、周りに数件ほど日本食のレストランと日本人向けのカラオケクラブがあり、この街の中では本当に小さな日本人部落といった感じです。なんと言ってもリーさんは日本語を話せるので、困ったことがあれば、彼を呼べば、だいたい解決します。
僕が来た2002年当時、カラオケクラブ、日本食レストランは共に2〜3軒しかありませんでしたが、2005年にトヨタが進出してきたのをきっかけに今では、レストラン6〜7軒、カラオケクラブ12〜13軒に増えました。ところがトヨタがさまざまな事情からフェードアウトを決め、2010年現在では日本人の滞在者数が激減りして、どのレストランもクラブも閑古鳥がないている状況です。
リーさんはこのホテルに勤務して13年目。ちょっとした待遇の差で職場を変えるのが日常化している中国社会で、同じ職場に10年以上勤務している中国人を僕はあまり知らないので、それだけでも彼を信用しています。
ホテル側も彼を評価して、今ではフロアの責任者で、大きなデスクも与えられているみたいです。
そんな彼が数か月ほど前、ホテルのわき道に小さな店を開店しました。件の善人商店の3分の1くらいの規模でしょうか、3畳一間くらいの広さの食料品店です。商品と冷蔵庫が入っているので、実質2畳くらいのスペースなので客が同時に3人は入れません。
彼はホテル勤務を終えると夕方から店に顔を出します。それまでは彼の故郷(湖南省)の高校時代の同級生の奥さんが店番です。
僕は市橋に行くと必ずそこに立ち寄り、店の前の折りたたみ机で彼と青島ビールをやります。つまみはしなびた落花生と激辛の鴨の首肉。そして彼から多くの中国事情を仕入れさせてもらいます。特に参考になるのは人間関係ですかね。
まだ一度も現場を見たことはないのですが「また、きょうも奥さんと喧嘩した」と彼は、振り返れば店の中にいる奥さんをちらっと目でやり、僕にそう言います。「ほとんど毎日喧嘩してる」と彼。「でも仲良さそうだけど喧嘩の原因はなに?」。「私と奥さん、性格合わない・・・」
まっそういうことですか。そら、他人だから仕方ない・・・って。
狭いわき道だが、さすが中国、ぞろぞろと人が行き来する。「カップ麺にお湯を入れて」とは、これから中国式カラオケクラブに出勤する綺麗なお姉さん。片腕のない酔った男が「携帯電話に金入れたのに使えない」とイチャモンをつけにきた。リーさんが撃退した。「あ〜安藤さんだ」なじみの日本式クラブの女の子が「激辛鴨首肉」を買いに来た。
「あ〜これこれ娘たち、おいちゃんが買うたる、すきなだけ買いんしゃい」「うわ〜ホントー」。「あの子たちいつも2元(25円)ずつしか買わないのに、今日は安藤さんのおごりだから20元(250円)も買ってったわ〜」と奥さん。ウイやつら。
店の電話が鳴った。中国式カラオケクラブのお姉さんからカップ麺2個の注文。さっきの女の子の麺を見て食いたくなった子がいるんだな。リーさんは奥さんから渡されたビニルに入ったカップ麺2個を手に、自転車にまたがった。
「安藤さんごめんなさい、私ちょっと出前に行ってきます。すぐ戻るから待っててね・・・」
おらあ、こんな中国は好きだ。