500 臓器移植考9
産経新聞の連載ドキュメント「命贈られて〜母からの腎移植」(5回目12/18掲載)の小見出し「検査100点満点」というのが附に落ちない。(以下抜粋記事)
手術を受ける前、ドナー(臓器提供者)とレシピエント(臓器提供希望者)それぞれの健康診断の他に組織の適合検査などのため、ドナーの母とふたり、阪大病院などに数十回通った。生体腎移植でもっとも重視されなければならないのは、ドナーが腎臓をひとつ摘出してもその後のせいかつに支障がないかということだ。それを調べるための検査を2泊3日で行ったりした。(中略)今年の春のことだったが、母とふたりで、受験の合格発表を見に行くような気持ちで、阪大病院の診察室を訪れた。
医師から「組織適合検査はほぼ百点満点。2泊3日の機能検査も合格です」と言われた。母は喜んでいたが、自分は素直に喜ぶことができなかった。(中略)(移植後)数値もよくなったし、自分の顔を見ただけでも術前との違いがわかる。内科的な治療ではどうにもならなかったのに、手術から2日目にもう変化がわかる。移植とはすごいものだ、というほかに言葉がなく、鏡の前でいつまでも立ち尽くしていた。(袖中陽一)(以上)
とまあ、こんな感じだ。この記事を読んでどう思うか?移植希望患者やその家族の方々に一筋の光が見えたのではなかろうか?高齢者でもドナーになれる・・・のだと。しかし、これは、かなり危険な情報であり選択である。
まず、プロの記者なら、医師が言う「ほぼ百点満点」の根拠を示して欲しい。何が百点満点なのか?先に記したように腎臓移植にはまず3つの検査をクリアしなければならない。ひとつは赤血球のAOB式血液型。そして最も重視される白血球のHLA型。そして抗体の有無。僕の知るかぎり親子でも百点満点とは聞いたことがない。HLA式ならマッチング検査はパーセントで表示されるので、その数字を提示するべきだろう。それが「ほぼ百点満点」とは医療機関としていかがなものか?
日本の免疫抑制剤は優れている。これを大量に投与すれば、たいがいの臓器は移植できます。しかし、術後が大変です。免疫をクスリで無理やり下げるわけですから、発癌、感染症、インフルエンザ、その他免疫不全による疾病にかかりやすいリスクを多分に背負わなけれ ばなりません。今後の連載に、そのようなリスクも掲載されればいいのですが、良かった良かったで終わるなら、それは完璧な情報とは言えません。
「少数派日記」〜臓器移植考過去ブログ NO 200(4/14) 201・202 (
4/17) 288・291(8/10) 524・525・526 (参照)