526 早稲田のメカニズム2
私立大学において営利は立派な目的のひとつだが、これにも早稲田は長けている。大きな収入源のひとつに受験料があるが、これには人気校になることが必要条件だ。そのためにスポーツは格好の材料である。
特にプロに繋がる野球部、その他ラグビーと駅伝はどんなに宣伝費を払ってもおつりがくるくらいの影響力がある。
早稲田の営業はそれを熟知している。だからスカウティングという投資に抜け目がない。駅伝の選手の出身校を見てもわかるだろう。ラグビー部に関しても、ここ数年の強豪・東福岡高のメンバーが昨日の準決勝でもレギュラーに4人リザーブに1人を擁している。一方の明治はリザーブに2名だ。この差がスカウトの差、つまり実力の差なのである。
かつて、強かったころの明治は、「来るか」と声を掛けて断る高校生はまずいなかった。そんな幻が今現在も通用すると思っている、とんでもない時代錯誤だ。
大東大や関東学院、青山学院など、かつてラグビー無名校が台頭し、現在では帝京、東海が外国人枠を使って殴り込んできたのも、宣伝効果を期待したスカウティングの賜物に他ならない。大学駅伝でもジャングルで獣と駆けっこしてる選手が出てきたのもそのためだ。
つまり早稲田は校歌にもあるように「現世を忘れぬ、久遠の理想」を真剣に学校が一丸となって追求していると言える。だから、ホテルをはじめいろいろな分野に多角的に進出し、キャンパスの全国展開も積極的に行っている。悪いことではない。
その反動だろう。早稲田の象徴であった「バンカラ」は死語となり、その真逆な「ハイカラ」な校風となってしまった。僕の回りのマスコミ早稲田人は、いい人だが暗くて大人しい人が多い。野暮なバンカラは皆無だ。飲んでてもオモロない、腹を割らないからだ。
本日01/03日、なぜこのブログを書く気になったのか。箱根駅伝復路6区、恐怖の下り坂でトップの東洋大から27秒遅れでスタートした2位早稲田の高野寛基選手(4年=佐久長聖高校)を見ていそう思ったからだ。高野選手は4年で初の駅伝出場。6区の平均速度は100メートル14秒。スポーツ経験者ならこれが、どれくらい凄いスピードかは、簡単に想像がつくだろう。駅伝最難関の下り6区で、高野選手は十回以上に渡るトップとの凌ぎ合いを制し、逆転トップで7区へタスキ。途中、路面凍結で転倒したにもかかわらずに、だ。そしてゴールと同時に意識を失い倒れ込む寸前に4人の救護に抱えられ転倒を免れた。この脳のコントロールを越えた肉体と精神が、失いかけた「バンカラ」の早稲田精神ではないだろうか。
ゴールしたと同時にまだ、腕時計でタイムを確認する走者も多いが、そんな体力が残っているなら、あと一歩早くゴールしろと言いたくなる。
明治8区の岸本大道選手(ひろただ=倉敷高校)もゴールと同時に倒れ込み、アスファルトに叩きつけられたが、どうして誰もチームメイトが支えてあげなかったのか、ここが早稲田と明治の力の差なのかも知れない。
昨日の国立での明早戦でのノーサイド後、選手全員がバックスタンドで挨拶した後、メインスタンドに移動して両校選手が整列するのだが、負傷退場で、もうほとんど歩けないSO田村がポツリ、グラウンドに取り残された。ところが明治の選手は誰も田村に手を貸すこともなく、わき腹を押さえ、足を引きずる男を、待つばかり。試合後の出来事だが、こんなシーンにも大敗の要因が確実に潜んでいる。
今、テレビの駅伝で10区のアンカ―にタスキが渡った。早稲田がトップ。流れからして、このまま早稲田が優勝するだろう。野球もラグビーも駅伝も強い者が勝つ、それでいいのだ。