547 私的近況報告19
さすがに世界3大都市、上海には広州にないものがたくさんある。
1/28/(金)はランチ終了後、S店長が「安藤さんにお見せしたい店がある」と、レストラン「G」からタクシーで5分ほどの、新しい複合商業ビルへ案内してくれた。
百貨店とレストラン街が合体した形式だが、日本のデパートの上層階にある程度のレストランとは規模が違う。大規模なフードコートと化している。
回転寿司はもとより日中韓台、アジアエスニックを中心にイタリア、欧米料理、スイーツ、カフェなど2フロアに渡りほぼ完全に網羅している。ガラス窓越しに店内のテーブルの料理を見ると、一品一品のボリュームが凄い。やはり中国人は味もさることながら量を重視する。「G」のような日本式の「品=小量」で勝負する店には限界がある。日本人には普通に受け入れてもらえるが、中国人には満足感を与えられない。これが大いなるジレンマとなり、中国人集客に苦戦した。
S店長の案内で僕らは「グラッチェ」に入った。おや、これは確か東京の自宅近くの幡が谷にもあるぞ。そうスカイラークグループのひとつでイタリアンカジュアルのファミレスの定番だ。笹塚の自宅から徒歩圏内にあり、年に数度は通っている。特に女こどもに大人気の店だ。
「安藤さん、日本のグラッチェですけど、こんな店、日本にありますか?」「グラッチェはあるけど、こんな内装に凝った店はないな」「でしょ、それにこのメニューも独特です。おそらく、日本のメニューと同じ内容ですが、見せ方がまるで違う」「あっ本当だ。どれも見たことあるメニューだけど、こっちの方がゴージャスに見える」「ですよね」「うん、これなら家族だけじゃなく、彼女とのデートでも十分使えるぞ」「そうそこなんですよ」「このカップル用のメニューなんか凄い美味しそうじゃん。これで2人で158元か、デザートまでついて・・・」「女の子も絶対喜びますよね」「日本で最初のデートにファミレスに連れて行ったら、即ゲームセットだけど、ここならいきなり三塁打だな」「ですよね、それに気が付きましたか?店員を見てください。全員、イケメンをそろえていますよ。制服も女の子ウケするデザインだし」「あっ、本当だ。基本的に男は自動的に目に入らないように設定されているから、ぜんぜん気づかなかったけど、韓流ぽいな。確かにホストみたいだな」「店内の雰囲気、家具、メニュー、店員のホスピタリティ。どれもこれも凄いのひとことですよ。もし、料理が同じ味で同じ値段だとしたら、安藤さんは幡が谷と上海のどっちのグラッチェに行きたいと思いますか?」「幡が谷に行きたいというヤツはいないだろうな」「ですよね・・・」
今はランチとディナーの間の空き時間。他店は客ゼロという店もあったけど、ここは親子連れやカップル、女子だけのグループなど、そこそこ入っていた。僕らはS店長N料理長と野郎3人でずうずうしくもカップル専用メニューと単品をオーダーした。野郎3人で前菜、ピザ、パスタ、ドリア、ハンバーグ、サラダ、スープなどを仲良く分け合い、女の子がオーダーするような甘いジュースを飲み、デザートのパイまで仲良く食べた。しめて278元(3600円)。これは上海の平均月収の8%にあたる。単純な掛け率で計算すると、例えば日本で月収20万円の人からみたら16000円の食事となる。ビルから一歩外へ出れば、10元(130円)で満腹になる店が乱立している。そして、その両者が普通に成り立っている。恐るべし中国上海!!!
さて、ここからが本題。S店長が切りだす。
「安藤さん、同じ日本発のファミレスですけど、先日行ったロイヤルホストと、ここのグラッチェですけど、比較してどう思われます」
「そりゃ、ぜんぜん勝負にならないね。あのロイホはもう行く必要ないし、ここが無くても行きたいとは思わんよ。でも、ここは彼女がいたら連れて来たいね」
「ですよね。僕も同じ意見です。でも、安藤さん、立地条件は圧倒的にロイホの方が有利なんです」
「つまり場所の問題ではない・・・と」
「そこなんですよ。ロイホの失敗は日本からダイレクトで日本のロイホをそのままの状態で上海に持ってきた。ところが、ここのグラッチェは日本からまず台湾に進出して、そして台湾経由で上海に上陸したんです」
「そうか、わかった皆まで言うな。つまり台湾資本か」
「そうなんです・・・」(つづく)