少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

558 上海綺譚5

2/11に路上で見た九官鳥が気になり、翌日(2/12)に再び見に行った。オッサンは路上でトランプのギャンブルに夢中になり、取り囲むギャラリーの中心にいた。オッサンの女房らしきオバサンがいたので、その八哥(九官鳥)は「売り物なのか?」と尋ねてみた。
「こっちとこっとちが500元。で、この子が100元・・・」だと。
すごい。昨日(2/11)見た水浴びをしていた2羽が500元で、ずっと籠の中にいた子が100元だと。つまり、500元の子は頭がいい子なんだそうだ。500元の価値は現在のレートだと6200円くらいだが、上海のサラリーマンの平均給与が3500元/月というから、日本のサラリーマンの平均所得を420万円/年として価格比例からすると、単純に5万円になる。
いずれにせよ上海の物価は異常に高い。東京、NYでの生活を経験しているが、安い物も多いが、高い物も少なくない。
2/11に話は戻る。九官鳥に別れを告げ、僕は再び散歩を続けた。この街に居ついて18日目。僕はある程度の顔見知りが出来た。中でも、骨董の家具を修理して販売している「老家具」の修理工員と老板(親方)とはすっかり友達になった。日参している。
午前11時すぎ、僕はレストラン「G」に戻る。育毛剤で頭皮をマッサージして、油臭い白衣を纏う。店の前にお清めの塩を巻き、大勢のお客さんが「G」に流れて行く姿をイメージして、神様に祈る。まかないの昼ごはんを、中国人の従業員に混ざって喰らう。辛くて汗が出る。これが埃と混ざり、再び垢となって、またあの垢すり三助にコスられ、あの銭湯の排水溝に流れていくのだなあ・・・などとぼんやり思いながら、炊きたての白米に舌鼓などを打つ。
正午少し前、「G」のすぐそばのオフィスビルから出て来た日本人サラリーマン客がポツポツと入りだす。僕は持ち場の皿洗い場から「いらっつさいませ〜」と誰にも負けないでかい声を出す。しかし板場にいる中国人シェフの陳くんの方が声がでかい。負けた・・・。
この日のランチは午後1時までの1時間で88人の来客。まずまずだ。これを3人のシェフ、2人の男性マネジャー、2人のウエイトレス、1人のおばちゃんと皿洗いの撲でやりこなす。僕はテーブルから食器を下げ、猛スピードで食器から食べ残しを捨て、油を落とし、食洗機にぶち込み、洗浄済みの食器を棚に並べる。短時間限定の単純作業は得意中の得意分野だ。
短いランチ戦争が終了した午後1時すぎ、店のすぐ前の交差点で子どもがはねられたみたいだ、と店長が誰かに話す声が聞こえた。僕が往来に出るとすごい人だかりで、すでに救急車も警察もかけつけていた。僕はあっと言う間に人垣をかきわけ、輪の中心に出た。被害者の子どもは中学生くらいの少し太った女の子。出血はないが目の焦点が定まっていない。明らかに頭を打っている。ストレッチャーがあるのに、救急隊員はそれに彼女を乗せることなく、両脇をかかえ無理やり立たせている。おいおい彼女の足はもつれ、完全に脳震とうを起こしているじゃないか。それにわき腹を痛そうに押さえている。内蔵破裂の危険性もあるぞ。素人の僕にも一目で軽傷でないことがわかる。ああ、中国語で何と言うんだこういう場合。う〜んぜんぜん出てこない。
事故が起きてからどれくらい経過しているのか?早く病院に連れて行けよ。彼女は3人がかりでようやく救急車に乗せられて搬送された。
残された野次馬が警察とぶつけたタクシー運転手のやりとりを遠巻きに見守っている。中国語のよくわからない僕は、そのやりとりを誰よりも近い位置で、まるで第一目撃者のような顔をして聞いている。だから野次馬のみんなが僕に「どうしたのか?」と尋ねてくる。僕はたったひとこと「ようわからん」と答えてやる。(つづく)