少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

613 ps中国5

4月12日火曜日。午前中、N料理長のアパートで帰り仕度。新安城レトロカフェ「ビリケン」で販売するために細々と買い集めた小物たちを行儀よくトランクに詰める。梱包作業、パズル、立体でも平面でも空間にモノを手際よく、かつ隙間なく埋める作業は得意中の得意で至福のひとときでもある。航空会社の荷物の規定の重量をオーバーしないように、時折持ち上げて重さを確認する作業はなお楽しい。僕の梱包で陶器、ガラスの類いが破損した例はまずない。
昼過ぎ、歩いて「G」に行く。その後のことはすでに書いた。散髪→入浴→垢スリ→犬遊び。そして夕刻、「G」に戻り、中国人マネジャーの王さんからの報告を待つ。
そして「大丈夫です、大丈夫です、大家さん、必ず約束守る、言ってます。もう、安心してください」と王さんが大家との交渉を終え帰ってきた。
約束とは、こちらと大家が協議の上、決定した金額で大家が「G」の備品を買い取るという件及び、保証金の一部返還及び、その他について一切の請求を大家がしないということ。この3つの懸案はかなり前から、大家と折り合いがついているのだが、大家が契約書類に頑として署名しない点について、我々日本人スタッフは懸念を抱いていた。そして大家との交渉係である王さんはいつも、口約束だけで丸めこまれてくる。僕らが欲しいのは大家が契約を反故した場合、証拠に残る署名なのだ。
そしてこの日も同様、王さんは署名をもらえることなく、何の根拠もない「大丈夫です」をぶら下げて帰ってきた。
もう仕方ない。大家を信じるしかない。考えても不安が募るばかりである。
最後の晩餐は僕のリクエストで「北京ダック」の店に行った。この店は今回で3度目、僕のお気に入りだ。王さん、S店長、N料理長と僕の4人に北京ダックがまるまる一羽。ワゴンに乗せられてやって来ると、目の前でシェフが慣れた手つきでさばいてくれた。皮を完全にはがされ、丸裸にされたダックをシェフが下げようとすると王さんが叫んだ。「何で持っていっちゃう???」。
「王さん、北京ダッグは皮を食べる料理で、中身の肉はスープになって出てくるんだよ」とS店長が優しく解説した。
「どうして?」
「どうしてって・・・つまりそういう料理だから・・・」
実は王さん、北京ダッグを食するのは今夜が初めてだそうだ。上海人と北京人は東京人と関西人より深いライバル心があるそうだ。上海人の王さんにとって「北京」と名のつくものには、おのずと手を出しにくいのではないか・・・とはS店長の説。日本語があまり上手くない王さんは何か言っていたが、僕には理解不能だったので、中国人のくせに北京ダックを知らない理由は、S店長の説を採用しておこう。
そんな極上の北京ダッグをなんと4人の中で一番年少のN料理長がご馳走してくれた。それもさりげなく勘定を済ませるなど、なかなかやるじゃんか。加えて相変わらず美味い北京ダック。最後の最後にいい思い出ができた。