616 帰国
4/13、上海浦東空港13:35発、韓国仁川空港着16:30、大韓航空898便。
少し早く着き過ぎた僕は、まだ朝食も食べていない。いささか空腹。しかし、ここの空港には旨そうなものはない。きっと国内便だからだろう。仕方なく、一昨日ファミマで買ったパンの残りをかじる。とりあえず持ってきてよかった。
機内で少し寝る。着陸態勢に入り、窓の外を見る。小さな島々が浮かび出し、あれのどこからが北朝鮮なのだろうか、とひとり思う。
トランシット(transit乗り継ぎ)のため、専用の出口へ。再度、荷物検査を受け、国際線搭乗口へ。機内食では満たされぬ空腹を満たすために、案内板でレストランを探す。バーガーキングにしようか、ビビンバにしようか迷ったあげく、ビビンバにする。次の飛行機、仁川ー成田、大韓航空705便は18:35発。時間はたっぷりある。
僕はひとりでカウンターに座り、ビビンバ(650円)を食す。隣にノ―キョ―のおっさんが座り、バドワイザー缶を2本立て続けに飲んだ。歳の頃アラ70。そして注文したうどんが出てきたオッサンは、そいつをズルズルと豪快にすすった。
僕は誰かと話がしたくて、オッサンに声をかけた。
「ゴルフですか?」
「いやいや、これからハワイに行くところですわ」
「へ〜、じゃあハワイでゴルフですか!」
「いやいや、しょ〜もない仕事ですわ」
オッサンがナイキのゴルフキャップをかぶっていたから、そう言ってみた。
「ハワイで仕事・・・って、もしかしてリゾート関係ですか?」
「まあ、そんなとこですわ。実は千歳から来たんですけど、直行便は高いんで、韓国経由ですわ」
「私も同じです。ただ、私は上海から日本に帰るところですけどね」
オッサンとしばらく話をした。上海でどえらい目に遭ったことを話した。するとオッサンも「実は私もオーストラリアで酷い目に遭った。やはり中国人にやられましてね」という被害者仲間だった。オッサンも何度か中国でビジネスを立ち上げようとしたのだが、結果、法治国家でないこと、民主主義ではないことが理由で実現に至らなかったという。
オッサンが立ち去ったあと、今度は韓国人婦人と黒人の小さな女の子が来た。黒人の子どもは本当にどの子も、漏れなく可愛い。婦人はその子のママだ。黒人の女の子が韓国人のママに甘える姿をアメリカ以外で見たことがないので、なんとも新鮮に感じた。携帯電話に忙しいママだから、女の子は不思議そうな顔をして、僕の方ばかり見ていた。
もうしばらくここにいる。腕時計をちら見するが、まだ時間が相当ある。とりあえずレストランを出る。買うあてもないが、とりあえずお土産の売店でも覗いてみようかな。そんな感じで売店に入ろうとした刹那、たまたま空港の大時計が目に入る。時刻は6時30分。
やばい、やってしもうた。僕がさっき見た腕時計は中国時間。1時間の時差をまったく計算に入れていなかった。
出航まであと5分。ゲートはどこだ。レストランに行く前にチェックしたはずなのに、プチパニックを起こして反対方向へ向かい、すぐに気づく。Uターンしてダッシュ(と言っても、他の人からは早歩きにしか見えないだろうが・・・)。
僕はピッタリ出航予定時刻の6:35にゲートについた。息が切れて苦しい。しかし、やはり僕には「時間の神様」がついていることを確信する。あの大時計が目に入らなければ、今頃、買わないお土産を眺めていたに違いない。ただ、僕より遅れている乗客がまだ一人いるという。最悪の事態は免れた。
席に着いて初めて気がついたのだが、ユニクロの2990円のダウンと、機内で着替える予定だったphitenのTシャツの入った袋が見当たらない。他にも何か細々したものを入れておいたが、何を入れたか記憶にない。一応、前の機内に忘れていないか、捜索願いを出したが、体制に影響はない。90日の披露の不快と、機に間に合った安堵で、複雑な眠りに落ちる。成田に着くころ、また腹が減った。