少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

684 祭りと喧嘩2

そんな環境の中、僕は何曲も静かにバラードを歌った。
後から入って来てカウンターについたご年配の夫婦の奥さまが気に入ってくれたのか毎回、拍手をくれた。しかし、奥の座敷ファミリーの乱痴気騒ぎがかなり気になったのだろう「あれはひどすぎる、カラオケの店のマナーの度を越している」と奥さん。「そりゃそうだが、知らない客なんだから放っておきなさい」と旦那さん。「いえ、私は我慢できない。誰かがガツン言わなければ増長するばかり」。「お前やめとけ」。「いえ、止めません」。
最初から居たおっさんが夫婦の仲に割り、なだめるも、夫婦は険悪ムードになり、いよいよ奥さまが立ちあがった。バラードを静かに歌う僕の背中を通り過ぎると奥さまはファミリーの前に仁王立ちになり「ちょっとあんたたち」と言ったところで僕は歌を止め、奥さんの肩を軽く叩き「奥さん、ありがとうございます。僕なら大丈夫ですから、こいつらは放っておきましょう」と元の席へお連れした。
「あなた偉いわね、でも私、ああいうの我慢できないんです」と奥さん。
「僕も気持ちは同じですけど、子供をこんな時間まで連れまわしていることがまず最悪です。つまりインテリジェンスの問題ですから、ああいう頭の悪すぎる連中には何言っても無駄。思考回路がイカれているわけですから、せっかくの酒が不味くなるだけですから、やめておきましょう」
僕のそんな言葉に「お兄さんの言う通りだ」と旦那さんも同調してくれ、店の一番高い「サントリー響」(15000円)をキープしていた旦那さんが一杯御馳走してくれた。
再び夫婦は仲良く飲み始め、「じゃあわしも一曲歌おうかな」とカウンターのおっさんが選曲し、いざ井上陽水がかかると、やはりほとんどBGMが聞こえてこない。おっさんは最初のワンフレーズを歌ったところでギブアップ、マイクをカウンターに転がした。
そして、その姿に今度はご夫婦の旦那さんがキレた。
「おいママ、ちょっと、ここの経営者を呼びなさい」
(つづく)