少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

687 祭りと喧嘩5

僕が喧嘩を売った相手は、近所の焼鳥屋の主人だった。
「ええ〜嘘でしょ〜?もしかして痩せました?」
「ああ、はい20キロほど」
「だよね、ぜんぜんわからんかった」
「ああ、はい」
「どうしたの、具合悪くしたの?」
「はい、肝臓やられちゃって、ちょっと手術したりとか・・・」
「ああ、そうなんだ。確かに言われてみればそうだけど、ぜんぜんわからんかった。じゃあ、本当に僕のこと知ってるんだ」
「はい、存じています」
「あいや、こりゃまた、えらい人に喧嘩売っちまっただなあ」
「いやいや、こちらこそホントにすいません」
これがあるから地元はヤバいっちゅうの。僕はまず一人で酒を飲みに行くことはない(もちろんオネーちゃん、もしくはカラオケ系は別だが)。その昔、ロスでジャイアント馬場さんの運転手をしていたK森さんが近所にいたころは、よく誘われて行った焼鳥屋さんだ。近くに物件が出たというので、焼鳥屋から50メートル離れたこのスナックを借りてオープンしたという。今月オープンしたばかりで、まだ3週間も経っていないそうだ。
「そりゃ、なんやよう知らんけど、ご開店おめでとうございます」
「ああ、いいえ、こちらこそよろしくお願いいたします」
ホンマに参ったで、ああ、ぶん殴らんでよかったわ。
「こんなことがあったからって、もう来ないなんて言わないでね」と台湾ママのフォローは流石である。「もちろん、また来るよ」と中国語で僕。最後はママとオーヤン琲琲の「雨の御堂筋」なんぞをデュエットして6600円を支払い「んじゃまた」などと言って先に出る。
店には陽水、響夫妻、経営者、台湾ママを残して出たので、僕の素性は経営者から明らかにされたであろう。ボトルには「知立」などと偽名を書いてきたのに、その日のうちにバレバレか。
また来るなどと、調子のいいことをぬかしたが、僕の性格からしてもう行くことはあるまい。行くとしても一年後くらいかな、というか、その前に銭がない。
僕は原田芳雄さんが好きだ。今宵は追悼で原田さんの「ヨコハマ・ホンキー・トンキー・ブルース」でも歌おうと検索したら松田優作さんバージョンであった。もちろん歌ったことはあるが遠い昔だ。基本的にリハのしてない歌は人前では歌わないので、またカラボで練習してからにしよう。僕はふらふらと歩きながら、急に原田さんの形見が欲しくなった。僕は世田谷区から渋谷区へのコンクリートの川を徒歩で渡り、ユニクロの柳井会長のバカでかい御殿の前にある町内会の掲示板の原田さんの訃報の告知をさりげなく失敬した。
僕はとぼとぼと歩き、途中のローソンで100円の塩むすび2個を所望した。安酒で荒れた胃に、むすびは優しく浸透してくれただろうか?僕は夏空を見上げ、天国のあの娘に「ごめんな」と謝った。
(おわり)