737 緊急近況報告3
9/9(金)午後2時。地下鉄千代田線綾瀬駅は地上にあった。初めて降りる。駅構内の喫茶店で待ち合わせ。
女性はRさん58歳、11年来のお付き合い。僕がまだ骨董関係の仕事をしていたころ、彼女が代々木上原駅前でリサイクルブティックをオープンする際に什器などの調達を頼まれて以来の関係。プロレス好きな関西弁のおばちゃんだけど、いつも元気溌剌で大使館でも通訳の仕事をした経験があるほどのフランス語の達人。そのRさんから6月「店を閉める」との電話をいただいた。理由を聞けば胃癌が見つかったと。それも進行の早いスキルス性胃癌。あの逸見政孝さんや、最近では萬田久子さんの旦那さんがやられたやつである。
「余命8カ月の宣告されてもうたんや。店閉めるの残念やけどしゃあないわ。ビリケンさんにもお世話になったなあ・・・。時間あったら最後に店見に来て・・・」。僕は見に行った。
それから、何かできることはないか考えた。2つ見つけた。ひとつは中国で行われているES細胞移植。これは堕胎した胎児から正常な細胞を取り培養させ点滴で患者の幹部に投与する新しい移植方法。机上では成立している医学だが、ドナーとなる胎児をどうするかという点で、中国の一部でしか行われていない。通常の癌に対しては効果てき面で、すでに1万人以上の患者に対し9割以上の成果を見ている。ただし、スキルス性に関しては詳しいデータを得るに至ってない。さらに高額。
もうひとつは宗教、「霊波之光」である。「信者の方でスキルス性癌を克服された方はおりますか?」と教会の人に尋ねたところ「そういう方は沢山おられます」とのこと。「いやいや普通の癌ではなく進行性で死亡率が高いスキルスです」と僕はそう聞き直したが教会の人は「沢山おられます」と繰り返した。僕はそういういい加減な返答には正直怒りさえ覚えるほうだ。スキルス性癌を克服された方がそんなに沢山いるわけはない。しかし、この宗教なら必ず一人、いや二人はいるはずだ、とは確信していたので、僕は班長さんのTさんに相談した。
Tさんは「スキルス性を克服された方を探すのもいいけど、その方を一日も早く教会にお連れして、入信させた方がいい」と僕に言ったが、それは僕にはできないと断った。もし、逆の立場だったら、嫌だからだ。
日本人の多くは宗教アレルギーでかつての僕もそうだった。入信するきっかけは実に微妙だ。ひとつ間違えれば、電話さえも取らなくなる。Rさんに聞くまでもなく、友達の多い彼女のことだから、宗教をはじめ、民間療法、サプリメントなどのお誘いは山のように来ていることだろう。(つづく)