少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

806 神保町でカレー

神保町はカレーの街?ん〜そ、そうだよね。
中尾彬さんが週に3回も来る・・・だと。そりゃ好きなら来るだろ。
共栄堂のスマトラカレー・・・そりゃ知ってますよ、有名だからね。
最近テレビで頻繁にやっているし。
「いつか賞を獲ったら喰ってやる」学生時代からずっと思っていた。
先日も店の前まで来て、そう思った。だって一杯1200円なんだも〜ん。
そりゃ旨いだろうて・・・。
僕の学生時代の行きつけは中華の「味一」懐かしいなあ・・・。なんで無くなっちまったんだろう。大盛り中華丼一杯270円。経営学ゼミの風間助教授もよく見かけたなあ・・・。バイトでゼニが入ったときは、ちょっとリッチに「いもや」の天丼500円。充実した食生活だった。
さて、神保町交差点の大手ドラッグストアでブルボンのアルフォート特価78円を購入し、ポケットに入れて食べる。冬はアルフォートがいい。チョコとビスケットの堅さがちょうどいいし、万が一地震で帰宅難民になった場合、自宅までの食糧になる。それにアルフォートには一抹の哀愁がある・・・。
刑務所では二級は月に一回、三級は一か月置きに集会がある。集会では菓子と缶入り飲料が支給され映画鑑賞をする。その菓子というのがアルフォートなのだ。「スクリーンを見ながら指で残りの数をかぞえて喰う」(ある受刑囚の言葉より)。アルフォートを食す時は、いつもそんなことを思い出しながら僕は喰らう。
お前は務所帰りか?って?違います、まだ務所の世話にはなっていません。花輪和一先生の「刑務所の中」(青林工藝舎刊)の抜粋です。
ああ、腹減った。しかし神保町は文学の街、漱石の街。イギリス留学で食費を削り栄養失調寸前になってまで文学の研究をした漱石先生がどこかに隠れてきっと僕を見ている。
スマトラカレーの前で5分悩む。入ろか我慢しよか・・・。
「賞を獲ったら食ってやる」と無言の捨て台詞を吐き、僕は拓郎や高節のアルバムを買う、5枚で525円。食欲ではなく文化芸術に生きるのだよ、アケチくん。
そして裏路地にあるカウンターのみの「クイックガスト」に入る。
ポークカレー290円。店の前で佇み計算する。仮に自宅近くの弁当屋でライス150円を購入し100均でボンカレーを買えば250円で済む。しかし、ガストだと味噌汁、おしんこ付で、ボンを温める手間も食器を洗う手間もかからない。光熱費と手間を加算すれば、イーブンいや、「ガスト>ボン+ライス」という図式になる。熟慮したうえで僕は食券を買いカウンターに座る。店員の「らっしゃいませ」とほぼ同時にポークカレーがカウンターに出される。そのはずだ、カレーはキッチンからではなくホールの店員がごはんをよそり、ナベからルーをかけるだけ。1分で出てくる。立ち食いそば屋と同じスピードだ。
僕は回りを見渡した。全席15のうち、客は9人。うち5人が290円のポークカレーをすすっている。ギリだが過半数を超える久々の多数派だ。女子はゼロ。全員おっさんだ。気兼ねなく食える。
隣のおっさんがカレーを食べ終わり、席を立とうとした刹那、彼のポケットから駅に置かれている無料の求人誌がポロリと床に落ちた。
男はそれをすぐに拾わず、約1分間、それをじっと見つめたまま、拾おか拾をまいか、悩んでいる様子だった。僕もカレーのスプーンを止めて同じく求人誌を見つめていた。
男は大きくため息をつくと腰を曲げ、それを拾い、またポケットにねじ込んだ。男はボロのキャリーケースをひきずって出て行った。狭い店内、男の肩が僕の背中をこするようにして出ていった。小柄だが同年代と見た。僕はゆきずりのポーク野郎の背中に「負けるな」とささやかなエールを贈った。
僕はドラゴン斉藤さんのようにカレーを30秒で食べるようなマネをしない。スマトラカレー1200円を食したことがないのでガストポーク290円だって満足だ。ゆっくり食べる。ビリケンカフェの活きのいいMちゃん店長が「社長(店ではそう呼ばれている)の食べ方見とるとイラッとする。なんでもっとチャチャ(三河弁=ササッとの意)と食べん〜?」と叱られるが、カレーは飲み物じゃないんだよ、アケチくん。
学食のようなプラスチック容器で出てくる290円、10分かけて堪能したぞ。席を立つと先ほどの求人誌野郎の椅子の下に小さなメモが。僕はそれを拾った。(つづく)