919 世界一幸せな男
世界一幸せな男がビリケンカフェにやってきた。
男はクーラーボックスに自分が飲む発泡酒を詰め込み、保冷剤を詰めてやってきた。
「釣りに行くわけじゃねえし、冷蔵庫くれえウチにもあらあな。なにもそこまでしなくても・・・」と僕が言うと、男は
「いや、迷惑かけちゃいかん。ほれ、こうしてクーラーを横に置いておけば、いちいち冷蔵庫に取りにいかんでも、簡単に飲めるだらあ」と言って実演までして見せてくれた。
「なるほどな。しかし、あんた、服装から見て、仕事帰りだらあ・・・。一日中、クーラーボックスぶらさげて仕事しとっただか?」
「ほら〜ほだよ(三河弁=そりゃそうだよ、の意)。んだって、ほのために来ただもん」
世の中には凄い男がいるもんだ。
さらに、男はマックポテトとしゃかしゃかチキンとたこ焼きをつまみに買ってきてくれた。ありがたい。
男は自称「世界一幸せな男」だと言う。本人が言うのだから間違いない。
すでに5人の子孫をこの世に残し、今季6人目を製造するのが新年に誓った目標だそうだ。「夢はビッグダディ」とも言っていた。凄いぞ。
男の国籍は不明だ。徳永英明の名曲「壊れかけのラジオ」を「壊れたラジオ」と言っていたので日本人ではなさそうだ。黒人(ラテン)の血が流れている感じもする。
男は「毎日、家に帰り、家族と一緒に過ごす時間が楽しくて楽しくてたまらん」と言う。あっぱれ2つあげてください。さすがは「世界一幸せな男」だ。その伝でいけば、自宅に居るのが「寒くて苦痛」のオイラは「世界一不幸せな男」ということになる。
そんな「世界一幸せな男」は「世界一不幸せな男」をカラオケに誘ってくれた。「タクシーで行こまい」という「幸せ男」を「もったいない電車にしよ」と「不幸せ男」が制止する。
名鉄新安城から知立に行き、駅前のカラオケボックスに「幸せ」と「不幸せ」の男が二人で・・・。どんなに過去の記憶を辿っても、男二人だけのカラオケボックスは「安藤の音楽史」には登場しないだろう。「幸せ」と「不幸せ」は黙々と淡々と交互に歌う。
「ここなら、漏れなく順番に歌えるからいいだらあ(=いいだろう、の意)」と「幸せ」。「そ、そやねえ・・・」と「不幸せ」。
2時間余すことなく歌いまくり・・・締めは「安藤、ネギ好きだらあ・・・。俺もやん」とネギラーメンを馳走してくれた。親切な「幸せ」。
久しぶりに「幸せ」をナマで見ることができて「幸せ」になれた。
そして「幸せ」を得るための「修羅場」や「喪失」が、その裏にあることも垣間見た。
あの夜、「幸せ」の部屋で造った「この世に有り得ない卒業アルバム」。
「お前らなあ・・・」とそこから先の言葉を失った「松っちゃん」(担任)の青ざめた顔を今でも忘れない・・・。男子校ならいざ知らず、知立高校3年8組の卒業アルバムはいずれネットに流出して話題になるだろう。
差別用語、放送禁止用語、なんでもあり、表現の自由を謳歌したぞ。(まあ松っちゃんがマジキレしたので、かなり改正したけど、それでもアレだ)。
そんな彼が「世界一幸せ男」に認定されたとは郷土の誇りでもある。
さあて、オイラもセンチメンタルボボバンドを見習って、とりあえず、そこらへん一の幸せ男を目指そうじゃないか、なあレッドキングよ。