960 星野仙一
1001回だから「星野仙一」。安易な発想ですみません。
僕が星野信者であることは、ドラゴンズ仲間では有名な話です。
まあ、星野さんについては賛否両論、ドラファンの中でも好き嫌いがはっきりしていますが、それでいいんです、それがいいんです。つまりグレーゾーンがない、シロかクロか、その潔(いさぎよ)さが、いいんです。
星野さんが、第二期中日監督を辞任され、NHKに内定したあとで、阪神監督に電撃就任した際、僕よりもさらに過激な星野信者のMK君(文化放送)が涙しながら僕に訴えました。「許しがたい・・・」と。
初台の「彩花」という寿司屋でのことです。
僕は彼に言いました。「まあ、そう言うなよ。NHKで解説するより星野さんはグランドに居る方がお似合いだからさ。タイガースに行って、また読売叩きしてくれればいいじゃん」。
MK君の形相がみるみる変化したことを、まるで昨日のように覚えています。
「安藤さん、それマジで言ってます?」
「そ、そだよ」
「まさか、安藤さんの口から、そんな話が出るとは思いませんでした」
「読売ならともかく、阪神ならいいじゃんかよ」
「安藤さん・・・って、自分の女房を他の男に寝取られてもいいタイプですか?」
「いや、それとこれとはちゃうやろう・・・」
「いや、まったく同じですね。ふざけんなよ。僕は許せん」
「まあ、落ち着けや」
「あなたこそ、よく落ち着いて鮨なんか喰っていられますね。ちょっと見損ないました。昔の安藤さんじゃない。僕は今考えています。阪神が移動する新幹線の時間を調べて、名古屋駅で自爆テロでも起こして星野さんと心中してやろうかな・・・と。やるやらないは、まだ決めていませんが、本当にそれくらいしてやりたい気持ちです・・・。きょうはその決行のお誘いに来たつもりでした。安藤さんなら賛同してくれると思いまして。でもがっかりです」
ドラゴン斉藤さんなら、この状況、わかっていただけると思います。
その後、MK君は人生の目標を失い腑抜け人間になって球場にも来なくなりました。落合が監督に就任したのを機に「オレ、マジで中日ファン、辞めようかと思っています。こんなのが家にたくさんあると迷うから、安藤さん、悪いけど、こいつら全部処分してくれませんか・・・」と彼は、子供の時から集めに集めた大切な宝物を僕に託した。それが下の写真(一部)です。
東京生まれの東京育ち。実家は後楽園球場の18番ゲートから徒歩5分、ダッシュして1分ちょっとの距離。ドラゴンズの大島選手似。そんな場所で母の手作りによるドラゴンズのユニフォームで野球少年だからいじめの対象。
御茶ノ水の明大から後楽園までは徒歩圏内。その中間点に彼の家がある。学校から後楽園に向かう道すがら、彼の実家に寄る。晩ごはんを狙うのだ。彼が家に居ようが居まいが僕は晩ごはんを喰う。
「うちの子は食べたり食べなかったりだから、安藤さんが食べてくれると助かるわ」とお母さんが言うので、僕は彼の変わりに、彼のお父さんと3人で食卓を囲みよく食べたもんだ。知らない人が見たら完全に親子団欒だろう。
彼の親父さんは、個人で印刷会社を経営していた。僕が主宰した明大ドラゴンズファンクラブでは「月刊どらごんTIMES」という小雑誌を発行していて、彼の親父さんに製本まで頼んでいたが、資金難で結局最終的には踏み倒した。
KM君、キミのドラゴンズコレクションは僕が一時的に保管しているだけさ、いつでも取りにきてくれよ。
(つづく)