1123 児童脳死判定
今月のはじめ、山元加津子先生の講演会で、脳死判定された成人男子と女児が生還され、今現在も存命しているという、人間の持つ生命力の実例を聞かされ、国鉄関連病院の東大卒の女医先生(医局長)とその話をした。
その後、富山大学付属病院で六歳児の脳死判定が行われ、国内で初の児童脳死生体臓器移植が施行され、一昨日の18日に同じ女医先生に意見を求めた。
先生も、子供の生命力の強さを熟知しており、「新聞報道でしか情報がないので、詳しい事情はわからいが」と前置きしたうえで「子供に対しての脳死判定が妥当か否かといえば、妥当とは言い難い。なぜならば、子供は蘇生する可能性を十分に秘めているから・・・」と返答した。
「百歩譲って、脳死判定が出て、今回のようにドナーとなったとして、6歳の子供の臓器(腎臓)を60歳女性のレシピエント(患者)に移植させるのは、どうかと思いますが?」という僕の投げかけに、先生も
「そうそうそこなんですよ。あたしも、あれはちょっとどうかな・・・って思っているんですけど、考えられる理由のひとつとしては事故腎かなにかで、腎臓になんらかの損傷でもあったのかな・・・と思いましたよ。もし、何も問題のない腎臓なら、同年代の患者さんを優先するべきでしょう・・・」
御存じのように臓器にも二十歳までは年齢に応じた大きさ(サイズ)があり、大人の心臓を子供に移植することはできませんし、逆もそうです。しかし、腎臓に関しては、比較的、年齢差の関係なく移植できる臓器ですが、それでもなるべく、子供から子供というのが医学界の常識ではあります。
女医先生の言われた通り「事故腎」の可能性は大いにあります。
私の患者さんにも2名、いずれも関西地方で、同じ私立大学の附属病院で腎移植手術を受けたのですが、いずれも事故腎の移植のため、お二人とも二年以内に、再び腎不全となり、さらに悪い状態になってしまいました。
さらに悪い状態とは、一度移植手術を受けると、身体に抗体ができてしまい、二度目の腎臓移植では臓器の生着率が著しく低下し、もともと免疫力の低い患者では輸血だけでも抗体ができるため、手術そのものを受けることができなくなる可能性があるわけです。
日本の生体移植を語るなら「法的な書面での審査」は徹底的に追及しますが、肝心の「臓器の質や患者への適合」は二の次三の次で、僕に言わせれば、そのほとんどが医者のモルモット(実験台)です。
移植医療は人権家とか、自己権益を侵された医師会とか、いわゆる三次元世界での表面上のモラリストたちが、しゃしゃり出てくるにつれ、地下に潜り、費用は高騰し、結局は救われるはずの、救われなければならない患者さんたちが苦汁を飲まされるのです。
我が身に置き換えれば、何人も看過できない問題であるとご認識ください。