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職業柄、徳洲会の関係者とも接触があります。まずは、以下のネットニュースを読まれて、考えていただきたい。病気(癌)腎臓の生体移植についての是非論です。ニュートラルな気持ちでお願いいたします。
ーーーーーーー以下、ネットニュース全文。
徳洲会の病気腎移植の申請を却下−先進医療会議
医療介護CBニュース 8月23日(木)22時45分配信
徳洲会グループが、いわゆる病気腎移植の一部保険適用を求めていた件で、厚生労働省の先進医療専門家会議は23日、この申請を退け、検討に必要な追加資料を添付した上で、再申請するよう促すことで一致した。事前評価を担当した斎藤忠則委員(東京臨海病院副院長)は、「医学的、倫理的課題が多数あるが、提出されている資料だけでは判断できる材料が不足している」と総括。継続審議が必要として総合判定を「保留」としたが、同日の会合では、今回の申請を認めないとする「否」と結論付けた。
病気腎移植は2006年に宇和島徳洲会病院の万波誠医師が実施していたことで知られ、当時、厚労省は病気腎移植により診療報酬点数を請求していたことを問題視していたという。これを受けて、一般社団法人徳洲会は、「修復腎移植に関する臨床研究」として09年から病気腎移植を取り扱っている。
今回、先進医療専門家会議に申請のあった病気腎移植(申請者非公表)は、直径4cm以下の小径腎がんと診断されたドナーから腎臓を摘出。がん細胞を取り除いて修復した病気腎を、慢性腎不全で透析治療中のレシピエントに移植するものだ。
申請者は、自ら手掛けた病気腎移植8症例で、「がんの発生と転移が認められていない」と報告。さらにオーストラリアでの病気腎移植43例も取り上げ、「移植後9年でがんが再発し、18か月進行が見られない1例を除けば、術後経過は良好」とした。こうした実例や、現在進行中の臨床研究の結果を踏まえ、「腎生着率100%、血清クレアチニン値2?/dl以下で、生体腎移植と遜色なく、最長29か月を経過するが、腎がんの発生・転移を認めていない」と強調。先進医療として承認されれば、医療費が年間約30億円削減される(病気腎移植1000例)ほか、日本臓器移植ネットワークに登録する腎不全患者1万人の平均待機期間が約15年から3年程度に短縮すると訴えた。
これに対し斎藤委員は、ドナーの安全性に対する課題を指摘。現在、小径腎がんの標準治療として世界的に推奨される腎部分切除術の10年生存率が93%で、根治的腎摘除術の82%を上回るとする「THE Journal of Urology」の結果を紹介した。その上で、ドナーに対するこうしたリスクの説明やドナーの同意などについて、十分な検討が必要になるが、「届出書には言及がない」と不備を指摘した。
さらに根治的腎摘除術では、がん細胞の播種、転移を防ぐため腎動脈、腎静脈を結紮・切除後に、腎臓周辺を剥離するが、移植用腎採取術では、病気腎の腎機能維持の観点から、手技の順番が逆になるため、「がんの播種リスク等が上昇する」とも警告した。
レシピエントの有効性、安全性の評価にも疑問を呈し、同様にデータの不備を指摘。ドナーからのがん伝播リスクのほか、移植後の免疫抑制剤の長期投与による感染症、発がんリスクなどについても整理すべきなどとした。このほか、公平性の担保などの倫理面、実施に当たっての施設基準の設定などで整備すべき点が多いとして、継続審議扱いの「保留」と判定した。
これに対し、中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「病気腎移植が保険適用にならないからといって、保険外併用療法を求めるのは無理筋、場違いだと思う。保留という結論が誤解を与えないかと懸念する」と見直しを要求。さらに、「レアケースとして全摘の可能性もある以上、病気腎移植が普遍的な医療として根付く可能性がなくもない。そのためには高い倫理性、透明性、公平性に加え、医学的な説得力が必要だが、今回の申請はいずれも極めて不十分」とした。
日本移植学会、日本泌尿器科学会、日本腎臓学会、日本透析医学会 、日本臨床腎移植学会の関連5学会が病気腎移植に反対していることもあり、戸山芳昭委員(慶大教授)、松原和夫委員(京大医学部教授)ら大学関係者も中川委員に同調し、総合判定を、申請を却下する「否」とすることで意見が一致した。なお厚労省は、過去に「否」の判定を受けて再申請し、先進医療として承認されたケースは存在するとしている。【医療・医薬ライター 半田良太]
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記事を読んでいただき、だいたいおわかりだと思いますが、得体のしれない違和感にお気づきでしょうか?
この原稿に、当事者の「声」がありません。
当事者とは、言わずと知れたドナー(臓器提供者であるとともに、このケースでは腎臓癌患者)とレシピエント(提供された患者)。万波医師が手術した少なくとも8名のレシピエントと数名のドナーが存在するのに、徳洲会、厚労省、マスコミのどれも主役というべき対象者の聞き取りをしていないという、当事者不在の勝手な論議。解説とともに次項で書きます。
(つづく=本日午後より修行に出ますので、続編は明日以降になります)