少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1278 悲劇カレー3

ゴールデン街一軒目「S」満席で入れず。二軒目「C」すでに閉店。そして三軒目となるのが悲劇の現場「N」。
極端に狭く、極端に傾斜のきつい階段を上がらなければたどり着けない店。我ら3人の男子は、このK2の北壁を命がけで登る。ザイル無しの真剣勝負。足を踏み外したら、おそらく命はない。
そしてやっとの思いでたどり着いた神秘のカウンター。
一番奥には流しの源さん85歳が、商売道具のギターを抱え背中を丸めて熟睡している。そして隅の客が僕らの来店を待っていたかのように勘定をして、そそくさと消えて行った。
「何飲みますかあ〜?」といつものように愛想のいいママのRさん。
「んじゃビールでもいただきましょうか」と僕。
「ダメ。ビールもう無いの。切れちゃった。ごめんなさいね〜」
「ん〜いいよいいよ、じゃあブラックニッカをハイボールで。みんなも同じでいいかい?」「ああ、もちろんです。よろしくお願いします」
「んじゃ、ブラックニッカのハイボール3つと、Rちゃんも、何かお好きなの飲んで〜」と僕。
この間のやりとりだが、うっすらと、様子が違う気配が。
かなり酔っているのかRちゃんの瞳孔がやや開き気味。
「わらしはもう飲み過ぎて酔っちゃったから、気い遣わなくていいのよ。安藤さんたちで飲んで。あれ、ところで何飲むんでしたっけ?」
「ん?だからニッカのハイボール
「あっ、そうでしたそうでした」
「あっ、このトーモロコシ、美味そうだね。食べていい?」
カウンターの上にあったしなびかけのトウモロコシを目ざとく見つけた僕がRママにそう言うと「ああ、どうぞどうぞ、よかったら全部食べて片づけちゃって」とR。「んじゃ遠慮なく」と3人の男はぶつ切りにされたもろこしの破片を回し食い。
「あれ〜、ところであんたたち何飲むんだったっけ〜」とRママ。さすがに、こっちも気が付いた。連れてきた二人の男たちがざわつき出す。
「ん〜ん、なんでもいいよ、面倒くさくないやつで」と気を遣う。
「あっ、そうなの、ごめんね〜、なんか酔っ払っちゃってさ〜あ」
「いやいや気にしない。大丈夫だから。でも珍しいねRさんが酔っ払うなんて・・・」
「そうなのよ。あっ、そうそう、ねえねえ、ところでさあ、カレー食べない?わらしが作ったんだけど・・・」
「おっいいねえ。いただこうかな・・・。キミたちは?」
「あっ僕もいただきます」とA君。「じゅあ、僕もお願いします」とB君。誰がどう見てもここまでは、普通の流れであった。
脚色せずに、さらに細かく状況を説明すると、Rちゃんからは「食べて欲しいオーラ」が存分に出ていて、むしろ「お断り」する方が、「何で、わらしのカレーが食べれないのよ」という具合にトラブルに発展する雰囲気があった。これはA君B君に聞いてもらえばはっきりする。僕らの胃には、まだ日高屋のギョーザが存在して、特に空腹でもなく、自慢のカレーを勧められたから「食するのが礼儀」だろうという、一般的な概念にとらわれていた。
ところが「じゃあ、いただきます」という3人衆の「快諾」がRちゃんの琴線に触れてしまった・・・。
血みどろのファイナルへ・・・
(つづく)