少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1495 ビリケン弁当

安城レトロカフェビリケンの日替わり弁当ランチはお値打ちである。
680円で提供しているが、材料費、光熱費、人件費を換算すると、ほとんど利益が出ない。あくまでもコーヒーを売りたいがための客寄せの手段でもある。
しかし、三河の人の反応は芳しくない。近所の三角デパートというスーパーでは280円の弁当を売っていて、これが意外と旨い。あんまき高校の先輩がやっている。
店内は調理の設備が乏しいため、3人の女性スタッフが、それぞれ自宅である程度の下準備をしてきてくれる。食材も、なるべく安価のものを探して仕入れてきてくれる。これは給料に含まれていないので完全ボランティアでやってもらっている。
また、母親が、必ず煮物を担当する。
数が予想できず、ひとり分でも余ってしまうと、その分だけ赤字になる。以前は、仕事帰りの姉が店に立ち寄り、余った分を自宅の食卓用に適当に買い取ってくれ、赤字分を補てんしてくれていた。
問題は、ごはんの量で、炊き過ぎると、残りは冷凍になってしまう。なるべく炊き立てを出そうとして少なめに炊くと、こんどは足りなくなる日もある。そんな時はサトウのご飯のお世話になるのだが、これだと超割高。おかわりとかされると、足が出る。何のための商売だかわからなくなったりする。
というわけで、一年前から、お弁当は完全予約制に切り替えた。
さりとて、明日の、しかも、たかだか喫茶店の弁当を前日から予約してくれる人もなかなか居ない。消費が冷え切った片田舎のカフェの切ない現実である。
そんな中、83歳の母親が所属する町内の婦人会だか敬老会だかの団体から、本日25個のテイクアウト弁当の予約が、一か月ほど前から入った。
ビリケンカフェはじまって以来の大量注文に、かなり以前から気合いが入りまくり、メインになる荒巻シャケを北海道から取り寄せ、これに鳥の胸肉ソテーを付け、煮物は9種類の野菜だとか・・・スタッフらと役割分担を入念に打ち合わせをし、ぎんなんの皮をパチンパチンとひとつずつ割り・・・と張り切っていた。
昨日は昨日で、店からわずか100m、徒歩2分の町内会館まで弁当を運ぶのに、段ボールに入れて運ぶか、ふろしきに包んで運ぶかと・・・そんな議論をスタッフと真剣にやり取りしていた。
まあ、ここまではいい。問題はその先・・・だ。
「食中毒でも起こしたらいかん。ニュースになってしまう・・・」と母。まあ、そらそうだけど、ずっと、そんなことばかり言っている。
「夏ならともかく、この時期だからダイジョウブ、ナマモノもないし、作ってすぐ運ぶから、その場で食べてくれれば問題ないし」と僕もスタッフも言うが、母親は譲らない。
「それでも、万が一ということもあるし・・・」と心配する。
そこまで心配するなら、受けなければいいのに・・・と思うのだが。
で、どうしたか?
「消毒液を買ってきて、弁当箱から消毒しなきゃあ・・・」
と言い出した。
「いや、そこまでやらなくても、新品だし、弁当箱から感染したという話は聞いたことないし・・・」と僕が言うと「いやいや、そんなことない。もし、ひとりでも中毒起こしたら、それこそ大変だし、だいたい、あんたは、ものごとを簡単に考えすぎなところがある」と僕の言うことには1000%反論するシステムになっている。
弁当箱は業務用の使い捨ての新品なので、そこまでする必要はまったくないのだが、母親は真剣に消毒するつもりでいる。僕がそれ以上言うと、いつものように口論になるので、もう触れることはやめにした。
今朝、起きてみると、濡れたツマヨウジが椀の中にあった。
「これは何?」と尋ねると、ぎんなんを刺すツマヨウジを煮沸消毒した・・・そうだ。そこまでやるか・・・!
でも、逆に濡れたツマヨウジ・・・って見たことないけど、そんな状態で出てきたら、僕なら「ムムム、もしかして使い回しかい?」って思うかも知れない。
細かい話だけど、煮沸するには水道代もガス代もかかるのだよ、アケチくん。
早朝6時過ぎに家を出て、僕は帰京。空いたころを見計らい、午後2時すぎ、店に電話を入れた。きょうはあんまき高校の同級生のC嬢の担当日。
「どう?お弁当、上手くいった?」
「うん、ばたばただったけど、何とか間に合いました」
「ところで、弁当箱、消毒するとか言ってたけどどうなった?」
「ああ、お母さん、やってたよ」
「えっ!本当にやったの?」
「そうなのよ〜。一個一個消毒液で拭いてたのよ〜。あれってさあ、消毒液の匂いが残っちゃうのよね〜」
「え〜まさか本当にやるとは・・・」
「そうなのよ。もう、発注が来た時から、ずっと消毒しなきゃ消毒しなきゃ・・・って言ってたから・・・。まあ、お母さんの性格だから仕方ないけどね」
「誰か止めてくれなかったの?」
「あたしたちじゃ無理。T君(以前、喫茶店や居酒屋を経営していた常連客)が、お母さんそんなことしたらあかんよ・・・って言ってくれたけど、結局口論みたいになっちゃって・・・。もうしょうがないわ。でもね、そこまでするなら、手袋にマスクに帽子もかぶらんといかんけど、そっちの方はいいみたいでね」
「そらそうだよね・・・。ほんと弱っちゃうよな〜」
「ん〜もう、お母さんの性格わかっとるでいいよ」
C嬢の実家にも、同じように頑固なお父様がおられるようで、母親の扱いには十分慣れていて、上手くやってくれている。
ともあれ、そんな母親なので、実家では「冗談」が通じない。
お店のお客さんに「いま(仕事は)何やってみえる?」と聞かれて「やることがないんで総理大臣を少々」と答えたところ、たまたま、それが母親に聞こえてしまい「ば〜か、何言っとるだ、総理は野田さんじゃんね〜、それにあんたに総理大臣なんか務まるわけないし、誰も投票せんわ・・・」と言われる。
これはボケと突っ込みの世界ではなく、真剣にそう返ってきて、最後は「そういうバカみたいなことばっかり言っとるから、女房に嫌われるんだわ・・・」とトドメを刺しにくる。子供のころからそんな感じです。
とまれ、スタッフのみなさまのおかげで、弁当25個、無事に終了してよかったです。
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