1615 東海紀行2
富士山の撮影を終え、座席に戻る。
さて、いよいよ本日の一大イベント「ひとり駅弁大会」。
実はディスカウントチケットで浮いた金額を利用して、久しぶりの「崎陽軒 焼売弁当」(750円)を豪快に食すつもりでした。ところが、およよ。焼売弁当の横に、同じ崎陽軒の「おべんとう 冬」なる限定バージョン650円 558㎏カロリーがあるではないか・・・。10分ほど葛藤のすえ、金額とカロリーで「冬」に決定。またもや「焼売弁当」の起用を見送る。
さて喰うぞ〜と弁当を広げた刹那・・・お隣のご婦人から「待った・・・」がかかった。
「あのう・・・わたし・・・静岡で下りますので、よろしかったら、お席を代わっていただけないでしょうか・・・」
「ああ、ナイスな判断ですね。(食事の)途中で代わるより、都合いいですもんね。先に言っていただいて助かります」
「ああ、すみません」
「それにしても、今日の富士山、綺麗でしたね・・・」
「あっ、ごめんなさい、そうでした? ぜんぜん見てませんでした」
「ああ、そりゃ、静岡の人は毎日 見てますもんね・・・珍しくないか」
「はい、そうなんですよ・・・」
判定は「う〜ん」。時代の流れとはいえ、発砲スチロールの仕切りは風情がない。水分を吸収しないので、全体が水っぽい感じ。古き良き時代の木皮の箱で弁当が食べたい・・・。少数派だけか・・・(涙)
僕の行先は「豊橋」だから「浜松」で下車。すると待ち時間が30分弱。なんのこっちゃ、結局が薬局で結局、新横で見送った「こだま661号」に乗車することに。「急がば回れ」ではなく「急がば急げ」が安藤総理のポリシー。特に東海道新幹線は一歩でも前へ進んでおかねば、いつ何時何が起こるかわからん時代。だから、この選択に悔いはなし。
浜松駅のプラットホーム、やることがない待ち時間。やはり暇そうなキオスクのおばちゃんに絡む・・・。
「うなぎ弁当・・・2300円・・・って高くないですか?」
「お店に行ったら、こんな金額じゃあ、とても食べれませんよ、お客さん!」
「ひえ〜ブルジョアですか?」
「当然です」
「もっと安くて美味しいものはないの?」
「うなぎパイはいかがかしら?」
「確かに美味い。土産に貰えば食すけど、自分で買ってまで喰らう勇気はない」
「じゃあ・・・この三立のチョコ源氏パイはいかがです?美味しいですよ」
「確かに三立の源氏パイは銘菓。しかも、チョコ源氏となれば見過ごせまい。されど源氏パイと浜松との因果関係は?」
「あれ、お客さん、なんも知らんとね? 三立は浜松の会社ですよ」
「えっ、だって、三立はカニパンも作ってるでしょ・・・だからてっきり東北出身だとばかり・・・」
「お客さん、カニパンまで知ってみえるの? それは嬉しいですわ」
「そら日本人なら誰でも知ってまんがな。あのパサパサした食感。美味いんだか、美味くないんだか、まったくわからん微妙な、なんとも表現できない宇宙食、しかも、あんな素朴なクセして、想定外のハイカロリー。カニのカタチをしてるだけでカニを名乗る大胆不敵なネーミング。あれば憎いが、ないと不安な微妙な立ち位置。安藤総理53年の人生の中で、いまだに解明できない謎のパン」
「御見逸れいたしました、お客様、もしや、安藤ソーリ?」
「そだよ」
「ならば是非、このサンリツの・・・」
「みなまで言うな、苦しゅうない・・・そのチョコ源氏・・・記念にひとつ所望してしんぜよう・・・」
「ははーーお代官さま・・・」
というわけで三立(サンリツ)のチョコ源氏パイ630円買いました。カメラが不覚の電池切れで、撮影はまたの機会に・・・。
というわけで、源氏パイの思い出話・・・。
あれは、あんまき高校一年生16歳の秋。同級生の女子の自宅(刈谷市)を家庭訪問する。もちろん不埒な気持ちもある。いつものセーラー服姿ではなく、私服姿の女子に心を惑わされる、動揺する。
誰もいない和室に通され、重厚なカリン製のテーブルを挟み、座して女子と対峙する。女子も緊張しているのか、ふたりの間に会話がない。やがて、ふすまが開き、女子の母親が飲み物と、木製の菓子入れに盛られた、三立の源氏パイを茶受けにと、提供された。
飲み物が何だったか、まったく記憶にない。女子はコーヒーが飲めない子なので、紅茶の可能性が高いが、確信がない。源氏パイは確か10個。5個ずつ食べなさい・・・という女子の母親からの無言のメッセージだったのか、他に何か意味があったのか、当時も今も解読できない。
男と女はしばし、無言で源氏パイを食す。
すると、再び、母親が部屋に。
なんと「だるま寿司」を出前してくれた。
どこの馬の骨とも知らぬ一介の高校生に、源氏パイとだるま寿司の接待とは。
挙句、母親は「じゃあ、私は出かけますから、あとはごゆるりと・・・」と気まで使ってくださり、男と女は密室でふたりきり・・・。
となれば・・・やることはたったひとつだけ・・・。
そう、寿司を喰らうこと・・・。
その後、女子は僕を自室に招き、こんな唄を聞かせてくれた。
つづく・・・。