少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1772 浄土からの声が聞こえる21

尋常ではない胸騒ぎ。喜ばしいはずなのに、得体の知れない不安と動揺。壁の時計よりはるかに速い動悸・・・。佳子は混乱し、何をどうしてよいのかわからなくなった。


「とにかく落ち着いて・・・もう一度ゆっくりと、最初から・・・」
佳子は分別のある女房だった。夫・昌男の就業中に携帯に電話を入れたのは幼なかった長男が盲腸の手術をしたときだけだった。それ以来の電話に昌男も驚いた。しかし、興奮状態にある佳子の言葉は言葉になっていなかった。


「本当に間違いないのか? お義父さんに間違いなかったのか? 本当だな、確認したんだな・・・・」
嗚咽しながら「うん うん」と昌男の確認に佳子はうなづいた。
「宮城の病院にいるんだな・・・」電話口の昌男に佳子はうなづいたが、宮城のどの病院かはわからない。
「お前は、落ち着いて、身支度をしなさい。病院は会社のパソコンで検索する。あとは、一軒一軒連絡して探すしかないだろう。お義父さんには、何か事情があるんだ。来てもらっては困るような・・・。とにかく上司に事情を話して、急いで帰るから。焦っても仕方ない。気持ちはわかるけど、まず落ち着こう・・・」
佳子は昌男の電話に救われた。


両親は生きていた。しかし、素直には喜べない、父の意味深な電話。母の身に何かが起こっていることは、佳子にも容易に想像できた。しかし「生きていてくれさえいれば、それでいい」。佳子は不安な気持ちを打ち消そう、と必死にそう思うように心がけた。


昌男と佳子、それに昌男の兄弟も加わり、宮城の病院に電話をかけ、事情を話し、両親を探した。個人情報云々で、公表に慎重だった病院もあるが、最終的には調べてくれた。意外と安易に見つかると思っていた作業だが、思いのほか難航した。
「どうして実家のある岩手ではなく宮城だったのだろう」。昌男の弟が、ふと漏らしたが、それ以前に、どうして10か月もの間、連絡を寄越さなかったのかが、佳子や昌男の最大の疑問であった。
とりあえず、明日、佳子は宮城に向かい、夫と兄弟は東京から電話やネットを駆使し、後方支援で捜索を続ける。週末には、昌男も宮城へ向かうことにした。


(つづく)