少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

2003 平成芭蕉in安曇野

後続車も対向車もすでにないあずみ野の午前。
安らかなる曇りの野山、ゆるりと独り踏むアクセルペダル。



てっぺんだけみどりの松並木は巨大なつくし。
東海道の妖艶な くねりもなく、まっすぐ天に向かい、裸の長い脚を木枯らしにさらし哀愁。



その隙間から向かい来るは赤茶、薄茶、あるいは焦げ茶、赤、やがては土に還るだけの元生物の皮膚たち。
時折、粉の子供たちが降り注ぐ。咲きそびれた元花粉たち。一葉の赤茶が前面フロントガラスにしがみついて離れない。どこまでついて来るのかね、無賃乗車。



寒くても中には入れてやらぬ。偶然通りかかった車にて運ばれし枯葉の運命。本来落ちるべき場所とは違う場所に運ばれ、かつての隣同士とは二度と逢えぬ山中の悲哀。
緑の草か青い花か古代からの大木か? 虫やリスではないにしろ再び得る命、土は永遠のカプセルホテル。夏蝉の抜け殻は優雅な鎧夢の跡。



自宅の隣家のご婦人はここでは生きていけまい。家の前の落ち葉を一枚残らず毎朝掃いている神経質。我が家の前の枯葉が隣家に飛ばぬよう、私も掃く毎日。
その虚しさに今、気づいた。
明日から掃くのはやめにしよう。


信州安曇野中房温泉まであと8キロ。冬の入り口山道の枯葉たち。やがて土に還り輪廻転生の法則により数世紀の後、新たな命を再生す。




平成芭蕉 平成25年11月25日記