2081 ゴーストライター/佐村河内守の愚
「少数派日記」でも絶賛し、特集を組んだのだから知らぬ存ぜぬでは済まされないだろう。報道機関として見抜けなかったことを読者諸兄に謝罪せねばなるまい。
「天から♪が降りてくる。それを逃さす、ひとつひとつ拾い、繋ぎ、五線紙に並べていく・・・」。確かそんなセリフを吐いていたと思う。これも言葉ではなくセリフだったんだな。
一事が万事という言葉がある。その伝でいけば、聴力がない、光が眼や肌を攻撃する、耳鳴りがひどく、ずっとボイラー室にいる状況、毎日19種類のクスリを服用している・・・よく考えてみれば、すべて自称。本人しかわからないこと。パフォーマンスの可能性は極めて高い。
それでも、あれだけの曲を作った人物・・・という前提ありきだから、NHKも簡単に信用し、何の裏取りもしなかったのだろう。
映画やドラマでもスタントマンというゴーストがいる。我々、文筆の世界でも同様にゴーストライターは多数存在する。かく言う安藤総理など、その分野のスペシャリストだ。これは主に、自叙伝が中心。
手法としては、インタビューにより、対象者のエピソードを引き出し、テープに録音。口語体を文語体に直し、肉づけして構成する。今回の佐村河内の手法も、文章と譜面の違いはあるが、ほぼ似たやり方である。
ただし、文章によるゴーストは、そのほとんどが自叙伝による自費出版であり、営利目的のスポーツ選手などのゴーストは、同様の手法とはいえ、その内容は選手個人の所有財産なので、ゴーストライターの仕事は、単なるワープロに過ぎない。多少、気取った語彙を使いまわす程度で、「作品」として世に出すわけではない。
それにしても「やっちまったなあ・・・」という感じ。
「それでも、作品が良ければいいじゃん」という本当にアホなコメンテータもいるが、そうじゃないだろう。佐村河内というエピソードありきのNHKなのだから、エピソードなくして、クラッシック素人の評価はここまでない。
無名のアーチストを売り出す手法としては、バレなければ画期的ではあった。みんなをペテンにかけたのだから、たいしたものではある。NHKでは佐村河内の前でピアノを演奏した被災者の少女もいた。大人を欺いても、子供をだました罪は軽くない。
ーーーーー以下、ネット記事転載ーーーーー
<佐村河内さん曲>作られた「物語」
毎日新聞 2月5日(水)20時59分配信
佐村河内(さむらごうち)守さん(50)の名で発表された「交響曲第1番 HIROSHIMA」は社会現象を起こしただけに、「代作」発覚の余波は大きい。クラシック曲が異例のヒットを飛ばした背景には、「売る側」「聴く側」「報じる側」の事情が複雑に絡んでいた。
同曲は、2003年に完成し、08年の初演を機に作曲家の三枝成彰さんらが高く評価。東日本大震災直後の2011年4月に録音されたCDで、広く聴かれるようになった。特に被災地で「希望のシンフォニー」と呼ばれ、愛好されていた。一方、13年3月のNHKスペシャル「魂の旋律〜音を失った作曲家〜」をはじめ、テレビや新聞も再三、佐村河内さんを「現代のベートーベン」などと紹介し、ブームを巻き起こした。
「HIROSHIMA」のCDブックレットに解説を寄せた音楽評論家の長木誠司さんは「強引な『ストーリー』をまとわせないと、無名の作曲家を世に出すことは難しい時代。発売後の過熱ぶりには、私もへきえきした」と明かす。「私たちは肥大化した『ストーリー』に、踊り、踊らされてしまった。誰もが『音楽ではないもの』を聴いていたとも言え、実に現代的な事件」とみる。また、同CD録音時に指揮を務めた大友直人さんの関係者は「楽譜を見て素晴らしい作品と思ったので演奏した。別人の作でも、楽譜に記されたことは変わらない」と話す。
音楽家の新垣隆さんは代作は「18年間にわたって」行ってきたと明かした。その間、メディア側も気づかなかった。
NHKによると佐村河内さんの企画は12年ごろ、フリーのテレビディレクターが持ち込んだ。しかし今月2日、代作との情報が寄せられ、4日に本人に確認したところ、事実を認めたという。NHKは5日のニュース番組で「取材や制作の過程で、本人が作曲していないことに気づくことができませんでした」と謝罪した。
◇本紙も記事掲載
毎日新聞では08年7月、広島市で佐村河内さんの交響曲の披露が決まったと、広島版で報じたのが初出。その後、大阪本社版夕刊芸能面や、東京本社朝刊などでインタビューを交えた記事を掲載した。
昨年8月11日掲載の大型ルポ「ストーリー」では、佐村河内さんは自身の創作について「頭の中で鳴った音を五線譜にはき出す作業」などと語っていた。
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最終更新:2月5日(水)23時41分
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皮肉を込めて、愛を込めて、玉置浩二でアルバム「ニセモノ」から「ニセモノ」