2303 横浜の管(くだ)人間
日に3本の点滴で繋がれた上に、きょうは足裏の手術(17日)後、一週間以上も経って、まだ汁が出るため、足裏に吸引器械(VAC)なるものを装着され、これで、私も歩行困難人間で、部屋の患者の寝たきり仲間入り。狭い収容所6人部屋に、それぞれの担当医や看護師、そして家族などが、たまたま同時に集う時間があり、ちょっとしたラッシュアワー状態で、奥に居る看護師さんは、脱出不可能に。雲国際の科学兵器攻撃を受ける時、そっと部屋を抜け出す技を身に着けましたが、それも、今は叶わぬ夢のまた夢。
武器商人の五十嵐隊長に頼んで、オウム事件の際、上九一色村に踏み込んだ、警察、機動隊が着用した防毒マスクを注文しなければ。
午後二時。本日、2本目の点滴を受ける。
吸引器のチューブは快調に浸出液と血液を吸引する。かなりの量の血液も吸引され、意識が朦朧となる。
そのうち、誰かが、足の方の吸引チューブを何度も引っ張る。目が覚めて、何だろう、と思ったら、昨日、開腹手術した、隣の老人が、ICUから戻り、タイヤ付きベッドの、タイヤに、私のチューブが絡まり、引っ張っても外れない。
「おい、ちょっと」と怒鳴るが、付添いの家族は「すいません」というだけで、絡んだチューブをほどこうとしない。
あとで聞いた話だが、老人は死んだそうだ。
ふと、チューブを見ると、かなりの量の血液が吸引されている。
「担当の先生呼んで」と看護婦さんにお願いすると「先生はいま、他の患者さんの処置中ですから、しばらくお待ちください」という。
見れば、確かに、もう一方、反対側の患者(雲国際さま)の治療をしている。
通りすがりの長身の見知らぬドクターが「おお、これはヤバいな」と言いながら、やはり、血液を吸引しすぎたのだろう、これ以上の吸血は命にかかわるとのことで外してくれました。
気が付くと、ANAの機内に運ばれて、これから帰国だそうだ。私だけ、重傷患者ということで豪華な椅子に座らせてもらえる。超ラッキー。
付添いの看護婦が言う。「もうひとりのおばあさんも亡くなったのよ」
「そういえば、お腹に白い布がかかっていたからね」私が返す。
今度は、本当に目が覚めました。
点滴が終わり、看護婦さんが来たので、浸出液、どれくらい溜まったか見てみたい・・・とリクエストしたら、箱を開けてくれました。
なんと。一滴も溜まっていない。血液も吸引されておらず、想像したのと大違い。隣の爺さんも、二人とも生きていたし、これも想像したのと大違い。