2678 続・松崎尚夫先生
8/8-17
松崎尚夫先生、追記。
「食べなくちゃ、生きるために」
幼年期、38度線を越えるため、はだし、血だらけの足で、三日三晩、敵兵に見つからぬように、月明かりの夜道を、幼い妹2人を連れて走り抜いた尚夫先生、三日間食うや食わず、水もない。
たとえ100万語の文字を並べたとて、その一瞬の痛みにすら到底及ばない。
それを先に言っておこう。
その先生が、食べれなくなった。病院食が喉を通らない。
生きるために食べ、そして生き抜いてきた人が。
寛子夫人に頼んだそうだ。
カロリーメイトと飲むゼリー。
しかし、そのカロリーメイトもゼリーも、先生は食すことなく、ベッドの隙間に残された。
寛子夫人に頼んだそうだ。
「病院食食べれないで、こんなもん食べてちゃ、まかないさんに申し訳ないないから、見えないところに隠してくれ」
奥さんは、すぐに手が届くように、ベッドの隙間に挟んだ。先生が最後に食べたものはなんだったのだろう?好きなものを食べれたのかな?
2年前のあんまき高校クラス会。
先生の80歳の誕生日と重なり、バースデーケーキと、サプライズで奥様を招待させていただいた。
皆さんからの会費から、先生に旅行代をプレゼントさせていただいた。
「あのお祝い金、本当にありがとうございました。旅行に行きたかったけど、ずっと体調が悪くて出かけられず・・・。肺を患っておりましたので、あのお金で空気清浄機を買わせていただきました」
寛子夫人が電話口でそう言った。
・・・