2824 地下鉄の縮図
10/21-17
地下鉄人生の縮図2
帰りの千代田線、国会議事堂前〜代々木上原。
私と同年代と思わしき夫妻が明治神宮前から乗車。
ひとつだけ空いてる席に妻を座らせた旦那。
身なりもキチンとしてる。服も着てるし革靴も履き、腕時計もはめている。
うん、中流階級以上に間違いない。
で、そのご主人、なにやら、ホールズ(匂いからして柑橘系)を座っているご婦人から受け取った、なんと微笑ましい。ご主人は満面の笑みで受け取り、包み紙をあけようとした。
刹那、車両がわずかに揺れた。
ご主人は私と同じ世代。わたしにもよくある悲劇が訪れた。
手元が狂い、思わずノッコン(ラグビー用語=ボールを前に落とす反則)。
若い頃はこんな恥はさらさなかった。ボール(ホールズ)が手につかない。
どういうわけだ、この老化現象、情けねえ。
楕円のボール(四角いホールズ)は主人の手からこぼれ落ち、数人のプレーヤーの足下に転がる。
主人はボールを見失ったが、座っている夫人の目線は、それを見事に捉えていた。
「ほらあそこに・・・」
夫人の指先は、敵陣の椅子の奥深く、それも敵のFB(フルバック=ラグビー用語、最後尾のプレーヤー五郎丸)の靴の後ろ、最悪のケース。
あ〜あ、である。
主人はあきらめた・・・。
されど、ラガーマンはネバーギブアップ。
ノーサイドのホイッスル、「この電車は当駅が終点となりま〜す」というアナウンスが流れ、五郎丸が席を立ったと同時に、夫人がテイッシュを主人にタップパス。
それを受けた主人がテイッシュでホールズを拾うや電光石火で自身のポケットに逆転のトライ!
そして夫妻は何事もなかったように美しく去る。
この現実を目撃したのは夫妻の他に、私と神様の2人だけ。
身なりからして夫妻は中流階級以上、主人は革靴に腕時計。
拾ったホールズを自宅に持ち帰り、水洗いしてから、食す可能性は低い。
とあらば、やはり「来た時よりも美しく」というボーイスカウトの精神で、ゴミの拡散阻止だ。
自らの失態(ノッコン)のリカバリー(尻拭い)お見事!
さすが同級生(いつの間にか)。
「俺なんかより、幸せになってくれよ」と彼らの背に手を振る。
そぼ降る冷たい雨、夕刻の代々木上原。家に帰ってもなにもないぞ。
私は彼らの栄誉を称え、松屋で牛丼並み380円を食し、我が栄養を整えた。
わっかんね〜だろ〜な〜!