少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

4647 運命論者2

7/17/19

『運命論者』vol2

「それでは安藤貴樹さん、左第3中足骨摘出手術を行います。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
杉並区和田の閑静な住宅街にあるガールズバー「オペの部屋」
マスターの営業開始の合図にエクステンションガールズたちが元気溌剌に呼応する。
「うん、いい雰囲気だ」
まな板の上の素浪人は、ただただ天井を見つめるしかない。
やけに明るいガールズバー

「そいじゃあ、安藤さん始めますよ~」
「あ、先生、よろしくお願いします。上手くやってくださ~い」
このバーではマスターのことを先生と呼ぶ仕来たりだ。
まるで「白い巨塔」のようだと素浪人は思った。
でも、冒頭の手術開始の合図は、財前教授のアレと同じじゃん。
ナマで聞けた。

試合開始。
ラグビーはレフェリーの笛で「ピ~」だけど野球は主審のナマ声で「プレイボール」
そこは野球の方が人間の味がする。
「痛くなったらすぐセデスって言ってくださいね」
私が指名したガールが顔の横に陣取る。ドリンクは遠慮してるみたいだ。
試しに言ってみたが「ここは飲食禁止なんです」ですと。
食事はみな、交代で。繁忙期には8時間くらい飲まず食わずもあるそうだ。
繁盛バーの悲哀。

「痛くないですか?」
「痛いです。太ももが」
「ああ、それは止血ですから我慢してくださいね」
太ももの大動脈を止めるため機械で圧迫しているのだ。
ああ、そういうことか、またひとつ、実体験としての知識が増えた。

これはFBFの皆さんにもぜひ覚えておいていただきたい。
白い巨塔」で里見教授役の江口洋介さん主演の「救急救命24時」の松嶋菜々子バージョン。
東京大震災を想定した進藤先生の行動は本当に勉強になる。
代議士の仲村トオルの奥さんの話だ。
留守中のマンションで家具の下敷きになるも意識ははっきりしていて外傷もまったくない。
発見された直後、引き出してもらい、気分も悪くないし、自力で歩ける。
トリアージ(triage=仏語)=救急識別(治療の優先度を決める作業)=(鳥味はアニキ「鮮度が古い、すなわち重症」の方からよろしくね、と覚えてください)の対象にすらならない。

ところが、阪神淡路では一見外傷もない被災者の方が、数時間後に何人も絶命された。
死因は一時的、血管の圧迫による尿毒症、もしくは、それに伴い静脈にの壁に血栓(血の塊)がへばりつき、それが歩行などの振動で剥がれ血流に乗り、肺の動脈(血管)を詰まらせる、最悪は死に至る、これが肺塞栓症、いわゆるエコノミー症候群というやつである。

かくいう私も肺塞栓の経験者である。
そうあれは確か、忘れようにも思い出せない、というやつでる。

もう10年くらい前だろうか、世田谷区三宿防衛省経営の軍人バー。
若い頃からお色気系の師匠ドラゴン斎藤さんが遊びに来てくれた。
「安藤くん寂しいだろうから」と言ってYouTubeの無料サイトの見方を伝授していただいた。
これを機に、我が家のある物質は小田原の記念館への譲渡が確定した。

軍人バー池尻近辺で幼少期を過ごしたドラゴン、野球とエロス談義に尽きぬ時間、惜念の情のその大きな背中を見送った私は、夜の軍食までの30分間、少しベッドで横になることにした。

施設は過去最高のグレードトリプルA。後輩の軍医Mの出世で、個室をあてがわれていた。
ベッドに横たわると、すぐに異変を感じた。
突然の寒気と異常な震え、そして寒いのに汗。実は冷や汗だった。
ただでさえ、民間人の分で会員制軍人専用バーに厄介になってる挙句の特別待遇。出資金の出所の一部は当方の税金だとしても気がひける。とにかく軍医Mに負担をかけてはいけない。
消灯後には、ドラゴン伝来の無料YouTubeが待っている。

いかん、歯までガタガタ来た。
なんやよう知らんし、寒いけど、痛くも痒くもない。しかし、異常な震えだ。
とりあえずガールを呼ぼう。ひとりで飲むのは寂いし。
で、ガール、体温測ると40度超え、汗は身体を冷やすための自律神経自動作動。
体感は寒いのに、40とはなんぞや?
なぜか、ガール涙目でダッシュ
オレ、なんかやらかしたのか?ここでセクハラは軍事裁判で強制労働か?

主治医の軍医Mがガールと来る。
「う~ん」とただでさえ気難しい顔をさらにしかめる。
なに深刻な顔してんねん、寒いだけやろ、電気毛布のひとつも持ってこいや。
後輩だから、こんな風に言えるが、それは口に出さずテレパシーで伝えたが、
ヤツはカタブツのオニギリみたいなヤツ、伝わらんかった。

館内放送でコードブルーが発令される。
おお、これがコードブルーか、ホンモノは初めて聞いた。
誰か死にかけとるんやな、可哀想に、どうかその人が無事でありますように、
朦朧として来た意識の中で、祈った。
そのコードブルーが自分だと知ったのは数日後だった。

なんやよう知らん、ひとり、ふたり、3人4人、
子供のころのインディアンの歌みたいに白衣のバーテンダーが次々と集まって来る。
どんなカクテルに挑戦する気やろうか。
同時にポータブルの機材が運ばれて来る。
ピコピコなんか音が鳴る。
ガールズが叫ぶ「血圧低下です」
あれ?救急救命の研修医役の田畑智子ちゃんのセリフじゃん。ヌード写真集買わせていただきました。これは殿堂入りなので小田原記念館には寄贈せず自宅管理です。

痛くも痒くもない、ただ寒いだけ。この人たち何しとんねん。
最大のショックは夕食抜き。ここの軍食は抜群に美味い。
こんなことなら夕食後に寒くなればよかった。

その後のことはよく覚えていない。
ガールズ達が交代で席についてくれたらしいが、事実なら、高額な延長料金の請求がくるはずだ。
むしろフトコロが心配だw。

翌朝、目がさめると、くだんの仏頂面がいた。
「安藤さん、おはようございます、気分はいかがですか?」
「腹が減った」
「そうですかぁ、ああ、良かった」
震えも寒気も無くなっていた。

「昨日は大変だったんですよ。血圧が70まで下がってね。もし60を切ったらご家族を呼ぶところでした。でもそうなったら間に合わなかったかもしれませんけど」
こいつ何言ってんだ。
その時点で、本当に何言ってんのかわからなかった。
とにかく腹が減ったのだ。

(つづく)

本日もついてる 感謝してます