4872 ビーフシチュー冷麦
3/3/17
どこの地方だったかなぁ、
役目を終えた、美しい雛人形たちが、木製の小舟に積まれ、供養という名目で、波にのり、沖へ沖へと流されていく。
お内裏さまとお姫さま、男女に分かれ、二艘の舟に何体も、山にして積まれる。
そして船尾は縄で結ばれ離れないように、一緒に、沖へ沖へ。
その哀れを、元持ち主の女たちが浜から見送る。
なんとも哀しい光景。なんと残酷な風習。
あれは、一体何であろう?
我思う。
あれは人形屋さんの差し金。ひとりの娘にひとつの雛飾り。
姉妹、母娘で使い回しにされては商売上がったり。
だから、どんどん廃棄してもらわないと、ラインが回らない。
まだ美しい盛りの娘子たちが何故、冷たき波の果て、海底の藻屑と化さなければならない道理があるのだろうか?
モノ言わぬ可憐な唇たち、別れたくない、沈みたくない、無くなりたくない、そんな声が聞こえぬか?
職人という母に顔をいただき、華麗を纏い、娘に愛され育て育てられ、桃の季節の晴れ舞台に、永い冬を寝、されど、やがて深い海の底ヘ、哀し。
結局、置き場所もないからだろう。それもreason。
問題は晩ご飯。そういえば冷蔵庫にカレーのルーの残りがあったなぁ。
よし、カレーうどんだ。
去年の中元にもらったウドンは記憶違いでヒヤムギだった。
それはいい。
問題は、カレーのルーだと思っていたのは、ビーフシチューの欠片だった。
で、できたのはやっぱりビーフシチューヒヤムギだった。
昔買った、ドンクのパンが出てきたので二切れつけてみた。
今年の桃の節句。
流れ雛を偲びつつ、独り地下にて汁をすする。