5645一杯のお粥と二本の水 その5
2/18/21
『一杯のお粥と二本の水』その5
水、水、水・・・
ダメ元で、1号ちゃんに電話をかけた。奇跡的に繋がった。3回目の電話で出た。
「ナニ!」
痴話喧嘩の男女、女の口撃にいささか疲労気味の男が、背を向けた女に、折をつけようと「あのさぁ〜」と戦闘ムードのトーンを落として声をかけた直後の、あの「ナニ!💢」だ。
「悪いけどさ、水二本持ってきて」
とはいえ、久しぶり見る実の父親が下半身丸出し、上半身飛脚では変質者以外の何者でもない。実はウルトラ警備隊は家族には秘密だ。誰もしらない、知らせてない。企業秘密というか善行は隠れてやるもの。裏街道が自分の性分。
慌てて布団を全身にかぶる。
「はい」
1号ちゃんが地下室のドアをペットボトル2本分の隙間だけ開けて差し出す。
「机の上に置いといて。ありがと」
ヤバかった。変質者コスプレは見られずに回避できた。
「あとごめん、風呂場からとうちゃんのパンツ2枚持ってきて」
「どんなパンツ?」
「なんでもいい、2枚ね」
「わかった」
1号ちゃんは、2本の水と2枚のパンツを持ってきてくれた。これが怪我の功名というやつだろう。10年以上前、そう、ひと昔前、小学生だった頃の1号ちゃんに、ほんの瞬間だが、会えたような気がした。頭と胃腸はグールグルだったけど、ほんの少し、懐かしく、あったかい気持ちになれた。
水はごくごく飲めるかと思ったけど、ひとくちでもどしそうになった。飲む時に頭を上下に揺らすと、地球が揺れる。ベッドに伏す。まだパンツを履くエネルギーはない。冷たい布団が股間に心地よい。でも、寒すぎて足先に感覚はない。
電気をつけっぱなしにしてしばらく落ちる。
何時だろうか?
まだ暗いけど、明けに近づいている。
起きれるか?
まだ、ダメだ。
もう少し寝よう。
ノーパン睡眠は快適だ。締め付けられるものはなにもない。
フリーなチンポ、つまりフリチン。
気持ちいい、でも気持ち悪い・・・
つづく