少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

474 天を味方に3

会議の成果に気をよくした僕は、角川に錦糸町の「尾張屋」に向かってくれと頼む。「尾張屋」は学生時代に燃えていた関東地区のドラゴンズ応援団の後輩のタカマの店だ。3代続く老舗の和菓子屋で、高砂部屋だったか、朝青龍のいた部屋から、優勝するたびに赤飯200人前とかのオーダーがくる相撲取り御用達の店でもある。そこの和菓子を、コンシェルジェたちへの土産にでも、と思ったのだ。新小岩から蔵前橋通りをのぼると荒川を渡る平井大橋に差し掛かる。ここから、まだライトアップもされていない東京スカイツリーが、まるで雑草の中から一本だけ生えたつくしのようにもアスパラガスのようにも見える。
「あんなもんしょせんは電波塔だ。東京タワーにはかなわんだら」と角川が言う。同感ではあるが、平屋だらけの墨田区にポツンと建つつくしん坊は「出る杭」のようにも見えるし「少数派」のようにも見える。東京タワーの方が圧倒的に好きだが、孤独そうなつくしに、何故だか親近感を感じてしまう。
午後8時過ぎの錦糸町、角川の予言通り「尾張屋」のシャッターは下りていた。携帯でタカマを呼ぶも反応なし。「何やってんだタカマのやつ!」。仕方ないので、このまま蔵前橋通りを走り安田学園手前を左に折れ両国駅方面へ。錦糸町駅前の「山田屋」で人形焼きという手もあるが引き返すのも面倒なので止めた。
「ところでお前、晩メシ食った?蕎麦食いたくねえ?」と僕が持ちかける。「どっか旨いところあるのか?」と角川。「いや、ねえけどむしょうに食いてえ」と僕。あれだけご馳走を食べたばかりなのに、どうしても日本蕎麦が食いたい。「俺、左側探すから、お前右側探せ」と僕。すると両国駅を越したところにすぐ見つけた。車をUターンさせコインパーキングを探すが無い。仕方ないので路駐する。蕎麦屋のおじさんに「車、路駐だけど大丈夫かなあ?」と聞くと、おじさんは時計を見ながら「いや、まだ油断しちゃあいけねえ」と言う。東京では夜8時を過ぎても路駐監視員が巡回している。目をつけられたら60秒以内に移動しなければアウト。土下座しても許してはくれないのだ。
緑の服を着た監視員に目を付けられた60秒後には「罰金15000円」が吹っ飛ぶ。これでは神田のやぶ蕎麦より高い蕎麦になってしまう。どういうわけだか角川は堂々とざる蕎麦をすすっていたが、僕は監視員の見えない恐怖と闘いながらおどおどと盛り蕎麦をすすった。
車は無事だった。僕は「あんこあられ」という最近流行っている両国土産を尾張屋の和菓子の代わりに少し買った。車は京葉道路に出て、両国橋から隅田川を渡る。彫刻家の山本先生のアトリエのある東日本橋を抜け、神田須田町経由で九段坂下へ。この坂を登ると右手に靖国神社がある。先の尖閣問題から売国奴議員が噴出する我が国ニッポン。「このあたりに来ると空気が違う。なんだか神聖な気分になるな。民主党のバカ議員どもは、まず参拝してから国政に臨むべきだ」と僕が言うと、運転手に「ふ〜ん」と軽く流された。
僕らは市ヶ谷から外堀通りに出て、四谷駅前を通過し、迎賓館の二股を右方向に進む。かつてビートたけしさんが愛人に会いに行く途中、バイクでこけた坂を登る。左手には東宮御所。我々と同学年の皇太子殿下の住まいである。愛子様の登校拒否、雅子様の精神不安定と、悩みのレベルまでが庶民化したことに、なんとも複雑な心境だ。これでは本当にマッカーサーの術中、思うツボではないのだろうか?
そして外苑東通りを左折して、今度は青山通りを右折。ここをまっすぐ行けば、目的地の三宿に出る。「ここは本当に綺麗なところだな、アメリカにも中国にも、こんな綺麗な場所はないぜ。ネオンも上品だし、すべてにプライドがある。やっぱどの国も日本にはかなわんぜよ」と僕が言う。青山の交差点を過ぎたところで僕が提案する。「そうだ、ついでだから表参道のライトアップを見て行こうぜ」「まだやってへんだらあ」と運転手。「今、やってへんだったら、いつやるだあ?まあはい12月だぞ」と僕。そして僕らは表参道を右折、NHKで聞いた90万個に及ぶ、小さな光の点が輝く中、男二人、色気のないドライブ。