少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

1256 8月31日2

楽しかった想い出もある。
子供のころから、ひとり旅が好きだった。小学4年から3年連続で安城から東京に旅をした。豊橋から新幹線こだま号に乗り、東京駅から国電、私電、地下鉄を乗り継ぎ、親戚や知人宅を表敬訪問する旅だ。
青山の親戚の家は毎年行った。表参道に近く同潤会アパートは遊び場だったが、親戚の家には女の子2人だからどうしようもなくて、神宮球場まで徒歩圏内だから、よくひとりで大学野球とかナイターを見に行った。
 当時の絵日記には「産経アトムズ」とある。貴重な資料だ。
千歳烏山の知人宅では本物の「泥棒」を見た。明け方の4時くらいだろうか?「泥棒だ〜」との声に目を覚まし、公団住宅のベランダから見下ろすと唐草模様の風呂敷にハンチング帽の泥棒が逃げ回り、その後を何人ものパジャマ姿の男たちが追いかける捕り物帳。サザエさんに登場するのと、全く同じスタイルの泥棒だった。知人のおっちゃんは、当時ジャパンタイムスの新聞記者で、浴衣姿で泥棒を追っかけた。
 おっちゃんの家の朝食は毎日トーストとベーコンエッグ。まるで異国にいるようだった。見ず知らずの少年たちの草野球に入れてもらうと、当時の人気番組「チャコちゃんケンちゃん」に出演している子役が何人かいて驚いた。
 そんな中でもキョーレツだったのが調布の久田さんだ。久田さん夫婦には子供が居ない。だから子供が遊びに行くと大歓迎してくれるのだが、相手も子供にどう接していいのかわからないのだろう。夕方になると、決まって、枝豆にトウモロコシ、ビールと井戸で冷やしたスイカが振る舞われた。
「タカちゃんの親父から、まだ子供だから、あんまり飲ませんでくれって言われてるけど、まあ飲め」と久田のおっちゃんが、ビールを注いでくれる。「あんた、いい加減にしときなさいよ」といいつつも、真っ赤な顔の僕におばちゃんも注いでくれる。
 やたら広い庭に、あまり広くない母屋。子供の代わりに、でっかいコリー犬を4〜5匹も飼っていた。でっかくておとなしく、いつも僕を舐めにくるのだが、あまり風呂に入れてもらえないようで、けっこう犬臭かった。
 おっちゃんは水槽でピラニアも飼っていた。夕方になるとエサの金魚を入れるのだが、ピラニアの奴は顔色ひとつ変えずにあっという間に金魚を食い尽くす。「エエエエエサ代が、ケケケケけっこう高いんだ」とおっちゃんはドモっていた。
 おっちゃんは背中一面に刺青があった。「おっちゃんこれ何?」と一緒に入る風呂で聞くと「かかかかかっこいいかあ〜?ででででもマネすんじゃねえぞ」と言っていた。
 おっちゃんの仕事は映画関係の仕事だと親父が言っていた。夜には調布駅前の屋外特設リングで行われる恒例の女子プロレスと小人プロレスを見に行った。当時は猪木・馬場の全盛で、プロレスファンが大勢集まっていた。盆踊りより、ぜんぜん興奮したぜ。で、帰り道でタイガーマスクのソフビ人形を買ってもらい、寝る前にまた枝豆とビール。
 嬉しかったのは、犬もピラニアもいるからおっちゃんの家はドアも窓も開けっ放し。おばちゃんが吊るしてくれた蚊帳で寝る。蚊取り線香の煙が風に流されて、蚊帳の中に入ってくると、何故か嬉しい気分になった。