1393 横浜紀行4
「関内に親切丁寧な眼鏡屋があるよ・・・」と聞いたのは、先週の金曜日(11/19)知立の居酒屋「樹園」でのこと。帰国中の上海の日本レストランKのS店長と、ビリケンカフェのM店長と、美人人妻Hちゃんと飲んでいる時だった。
Sクンは少数派日記でも何度か紹介したイケメン店長で、韓流どっぷりのMちゃん店長も、「こりゃ、ほんとにイケメンだわ。綺麗すぎて、まともに顔見とれん」と三河弁でS店長の横に小さく座ったものの、いつもMちゃんらしくないしおらしさ、乙女のようだ。「気に入ったなら、お持ち帰りしてもええんやで」と水を向けると「恥ずかしくてようできん。それにSくんが気の毒だし〜」と遠慮の塊となった。
そんなとき、ふら〜と店に入って来た謎の男が、Mちゃん店長の横に座ると「世の中、男も女も、顔がええやつほど、たいがい、中身はたるい(三河弁=つまらん)。醜男、ブスほど中身で勝負しとるから、おもしろいじゃんねえ。だからオレは中身で勝負しとるじゃん。どや、お姉ちゃん、ワシと付き合ったらんかい」との投げかけにMちゃん店長の緊張感がほぐれ、謎の男も意気投合して、しばし一緒に一献傾けた。
あした、仕事があるとかないとかで、謎の男は先に引き上げた。これも何かの縁、一期一会の精神で、帰り際に、僕は何か男を褒め讃える言葉はないか、と必死に探した。
「おお、ニイチャン、ええ眼鏡しとりまんな・・・」
「ああ、これか〜。これ横浜でよ〜、作ったんだわ〜」
「なに〜、横浜まで行って作ったと申すか〜」
「たまたまだわ〜」
「たまたま横浜に行ったのか、たまたま眼鏡を買いに横浜に行ったのか?どっちやねん?」
「普通、たまたま横浜に行ったついでに・・・だろう・・・、なんやこのおっさん」
「お前だって、おっさんだろ。されど、たまたま行った横浜で眼鏡を仕込むとは、なかなかできることではない、豪気な輩」
実はなにを隠そうこの僕も、旅に出た時に、その街や村を訪れた記念として眼鏡を仕込もうと、必ず眼鏡屋には立ち寄るのだが、地方の眼鏡屋は老舗職人が多く、高額でとても手が出せない。どうしても、5000円のインスタント眼鏡のお世話に、心と経済が傾いてしまう。
「いやいや、これも、そんな高くないよ。実は同級生の知り合いがいてね、そこでつくってむらった(三河弁=つくってもらった、の意)」
「へ〜いいな〜」
「お前もいきゃ〜いいじゃん(三河弁=行ってみたらいいじゃん)」
急に慣れ慣れしくなってきた。馴染みやすいオサーン。
「いきゃ〜いいじゃん・・・って、どこにあるだぁ?ほんな店(ほんな=そんな)」
「ほりゃ〜、横浜の関内に行きゃあ、野球場があるだらあ、ほの近くだわ〜。行きゃあ、すぐわかるて・・・」
関内の野球場とは横浜スタジアムのことだろう。謎の男は、かなりアバウトに答えると「んじゃ・・・」とか言って、店を出た。
その後、Mちゃん店長、イケメン店長、美人人妻Hちゃんと小生はしばしカラオケに昂じた。時が経つに連れ、ひとり消え、ふたり去り、いよいよひとりになった僕の相手をしてくれたのが、お店のアイドルYちゃん。金曜日だけ限定のアルバイト。陽気で可愛いビール好き。結局、この夜は、合計21本のキリンラガービールを空けたという。最終の汽車で新安城へ。
それから、約一週間後、僕は関内にいた。謎の男が言う「親切丁寧」な眼鏡屋を覗いてみたくなった。(つづく)
揺れて 揺れてあなたの腕のなか・・・