2487 警察病院記20/座薬男2
5/1-17 FB投稿
男は微睡(まどろ)む、しばしの灯りの中で。
ここだけは男が支配できるサンクチュア桃源郷夢の国。
わずか6時間だが痛みからの逃避行、浮世と離れる。
されど現実は厳しい、逃避行は5時間持たずタイムアップにてオタンコ茄子コール。
「ドングリお願いします」「まだ6時間経っていないからダメです」ai時代到来の幕開け、機械音声事務作業的無慈悲回答非人間的白衣。さらに悶悦すること一時間、時を計り、再び茄子呼び。
「なんでしょう?」
「ドングリを一粒」
「はぁ〜!」
よく見れば先ほどのaiとは違う人工遅脳が!
「早く挿入を」と男が懇願してから遅脳は10分後に登場。
「自分でできますか?」アイボより冷たい機械音声。
「ムリです」のアンサーに不機嫌そうな態度。彼氏との約束に遅れてしまう、ジジイいい加減にしろ、とは心の叫び。
男はその昔、サムライを少々嗜(たしな)んでいたため、茄子の真贋など容易(たやす)く読める。されど男には節度があり、茄子に同情。女こどもに晒すべき尻、特に汚れた肛の門など炎天下、人さまに差し出すものではない。時が時、時代が時代なら、腹を召すべき恥辱屈辱の儀。それでも男は生(性)への執着のため、忍んで耐えた。
「チカラ抜いてください、チカラを」
ならば、耳もとでそっと囁け、怒鳴るなai!
「はい、大きく息吐いて〜」って テメ〜息吐いた時に押し込んだだろ! 息吸った時に入れなきゃ、逆圧で反発作用が働き出てくるだろうが!ボケ茄子!
男にはまだ出産経験がなかった。よって締まりがいい。ドングリが真ん中あたりで肛の門で押し潰された感覚があった。
「入りましたか?」と尋ねるも、「入った」と二つ返事、速攻で場を去る。早く化粧を直して待ち合わせに行かなくては、彼氏の機嫌を損ねる。手袋を外した時に、男の肛の門に触れた手袋に付着した汚物が茄子の指に直に触れた。しかし茄子は指を洗浄することはない、「そんなのカンケーねえ」と退勤を急ぐ。
男は朝の感触、ギュッ ツルッ ポン がなくギュ ギュ のみに違和感を拭えない。男の感触では、ケツ圧にドングリが押し出されたイメージ。
そこへ医者が来る。
「安藤さん(仮名)痛みはどうですか?」
「朝、ドングリを入れてもらいいささかラクになりました」
「それは良かった。ならば退院して自宅で自分で入れられますか?」
「それは訓練次第でできるかもしれませんが、それ以前に痛くて歩けませんし、立てません」
「おお、そうでしたそうでした」
ここはケーサツ、治療がメインではない。
GWの休暇のスケジュールのため、入れ替わりで知らない茄子が今夜の担当。普段と違う、検査やクスリ。「いつもと違うけど」と指摘すると「あらヤダ、ホントだわ」とオタンコ茄子。隣の蕁麻疹オサーンも「さっきの先生の指示と違う点滴みたいですが」の問いに「あらヤダ」とオタンコ。男らは生死に関わる疾病でないにしろ、痛みを堪える戦士として不遇。お気の毒さまである。
男は猿股を自ら下げ確かめる。溶けたドングリの残骸がベットリと。女心の切なさを同時に知る。
オタンコが酷いのか、愛される患者にならない野郎どもに罪があるのか?
GWの快晴、東京の午後が土砂降りに見舞われた事実を、箱の中の野郎どもは知る由もなく、自身の立場と彷彿する他人事として収め、これが宇宙の法則だと、やるかた無しの夜をまた迎える。
結