少数派日記

社会派エロブログ、少数派日記です。

“安藤総理の少数派日記”

349  心友(しんゆう)

あまりにも気の毒すぎて、我が心友の名はここでは書けない。まるで鏡に映った己の姿を見ているようだった。あの日あの時、未来が見える望遠鏡があったならなあ・・・などと愚かなことを、ふと真剣に考えたりもする。
人生は失敗の繰り返しだが、時として冒してはいけない失敗がある。何とは言わない、価値観は人それぞれだ。
その失敗を上手くクリアできた人もいるだろう。もしくはリセットという手もある。しかし、そのどちらもできず、自分自身に大きな過失があったにせよ、その代償は人生の予想をはるかに超える責任となる。
「他人の不幸は蜜の味」女性誌のゴシップか。不愉快極まりない言葉ではあるが、残念ながら事実でもある。人は自分より不幸な他人を見つけることによって自分の立場をまだ安定だと位置づける、そんな一面も確かにある。愚かなことだが、身に覚えがある。
同じ不幸を探しては傷を舐め合い、ああ俺の方が奴よりまだマシだ、などと小さな喜びを見つけ、孤独から一瞬だけ抜ける。これを愚か者の極致と言わずして何と言おう。
2年前のリーマンショックの時、彼の業界も先行きがまったく不透明になった。そんな彼が僕に言った。
「安藤さん、こんな時代だからジタバタしてもしょうがねえ。せっかくこんな時代に遭遇したんだから、俺はむしろ不況を楽しんでやろうと思っていますよ」
30年来の付き合いになるのか、僕より2つ3つ後輩。彼の言葉はいつもピンチの時の励みになる。
彼も俺も、日々必死に闘っている。それは守らなければならないものがあるからだ。過酷な闘いである、きっとみなも同じだと思うが。
ただ時折、何のために、こんなにやっているのか、虚しくなる瞬間が存在する。どこでどう間違えたのだろうか。答えが出たとしても、時間は戻せない。きっと、こんな風に行き場を失った男どもの屍は巷にごろごろしているに違いない。おお神よ。
それでも俺も彼も決して負けはしない。
「俺、浅草で250円の弁当見つけたんすよ」男の眼が光る。
いずれ日本の業界を揺るがす男は、守るべきもののために250円弁当でひと日の宴を静かに終える。俺も負けじとローソンで豆腐と納豆を買い、麦茶で晩餐とする。
それでも俺たちは苦しくも悲しくもない、未来を信じる力があるからだ。ただ少し寂しいだけ。
明日何かが変わっているかな?ないだろう。でも、5年、10年後の僕らはきっと・・・。