少数派日記

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“安藤総理の少数派日記”

2413 死後結婚2

前回からの続き

死者の結婚式 「あの世」の幸せ願う山形のムカサリ絵馬師
Yahoo!ニュース 3/6(月) 11:00配信

死者の結婚式 「あの世」の幸せ願う山形のムカサリ絵馬師
ムカサリ絵馬師の高橋知佳子さん。繊細なタッチで絵馬を描く。
ムカサリ絵馬師への道
 山形県東根市の高橋知佳子さん(44)は、ムカサリ絵馬の絵師だ。

 「物心ついたときから、霊が見えていた」と話す。
 「見える瞬間は、周囲の景色がカメラのシャッターを押すようにぱっと変わり、黒っぽい影や、人の形などが見える。語りかけてきたりすることもあるが、襲ってくることはない」
 怖いという気持ちもなかった。

 あるとき、家の中で目が潰れた男性の霊が、高橋さんに向かって「まなぐめね(目が見えない)」と語りかけた。家族に話すと、戦争で目を失って亡くなった親戚ではないかと聞かされた。供養のため、彼の似顔絵を描くことになった。「せめて、絵の中では目を戻してあげよう」。目を描き込むと、男性はお礼を言って消えていった。

 「描くことで、救われる魂があると知った瞬間だった」

死者の結婚式 「あの世」の幸せ願う山形のムカサリ絵馬師
高橋さんが描いた絵馬の一枚。若松寺に納められている。
 ちょうどその頃、テレビでムカサリ絵馬の番組を見た。故人の霊から絵馬を完成させる絵師の話を聞いているうち、「自分の能力を生かせるし、誰かの役に立てるかもしれない」と興味がわいた。
 寺に電話すると、絵師が高齢で引退するという。「是非お願いします」との言葉もあり、絵師の仕事を始めるようになった。

 絵馬のルールは一つ。実在の人物を絶対に描いてはいけないことだ。
 あの世に連れていかれてしまうことがあるからだという。

 ケント紙や、ボールペン、アクリル絵の具など、画材はごく普通のものばかり。遺族から写真をもらい、頭の中で故人の魂に語りかける。大半は沈黙したままだが、中には望みを伝えてくる人もいる。

死者の結婚式 「あの世」の幸せ願う山形のムカサリ絵馬師
若松寺には全国の遺族から絵馬の奉納の依頼が来る。壁に並ぶ絵馬にはそれぞれ遺族の思いが込められている。
遺族の思い
 静岡県磐田市在日韓国人の女性(55)は3年前、18歳で急逝した兄のムカサリ絵馬を奉納した。
 葬儀は済ませたが、兄の存在はいつも傍に感じていた。ある時、夢の中に出てきた兄が  
「もっと明るいところに行きたい。ここは寒い」と訴えてきた。

 「ちゃんと供養をされていないんだ」

 兄のことが気にかかるが、供養の方法が分からない。
 テレビで偶然知っていたムカサリ絵馬。子どもが18歳になり、亡くなった兄の年を超えた時、供養してもらう決心がついた。絵馬を描いてもらおうと、若松寺に電話した。

 高橋さんに描いてもらったのは、韓国式の衣装を着て、綺麗なお嫁さんの隣でほほ笑む兄。「これでやっと供養してあげられる」と安堵した。奉納した絵馬の写真を撮って眺めているうちに、涙が溢れて止まらなくなった。眠りにつく前、亡くなったころのままの兄が脳裏に現れ、にっこり笑って消えていった。

 「ありがとう、って伝えに来たのかな」

 それ以来、兄に会ってはいない。「あの世とこの世がつながっていて、肉体はなくても魂は生き続けているんだと感じました」と声を詰まらせた。

 


絵馬が果たす役割
 現代になって科学が発達した世の中で、非合理的と思う人もいるだろう。インターネットではムカサリ絵馬の検索予測に「怖い」「タブー」といった言葉も並ぶ。磐田市の女性は、「知人にも薦めたいけど、なかなか絵馬のことを口にしづらい」という。死はデリケートな問題な上、死者と対話ができることをにわかに信じ難い人もいるからだ。

 しかし、絵馬の依頼はなくならない。彼岸の時期になると、依頼が増えるという。

 山形県内でムカサリ絵馬を描ける絵師は高橋さん一人になった。約10年で描いた絵馬は100枚以上。「根底にあるのは故人を思う親や家族の気持ち。故人にとっても遺族にとっても絶やしてはいけない風習だと思う」

 描き始めた当初は難航することもあったが、完成した絵馬を渡すときの遺族の喜んだ顔や故人が嬉しそうに向こうの世界へ渡るのを見ると、一生をかけて向き合っていかなければならない仕事だと決意した。

 人の思いがある限り、ムカサリ絵馬は残り続ける。